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非正規社員の数が過去最多。このほかにも実質賃下げを示唆する出来事が増加中

 

 総務省は8月13日、4~6月期の労働力調査の結果を発表した。それによると、非正規雇用で働く労働者は1881万人となり、四半期ベースでは集計開始以来最多となった。一方、正社員として働く労働者の数は、3317万人で前年同期と比較して53万人減少した。労働者の総数は増えているものの、正社員が減り、非正規社員が増加している実態が明らかになった。

 男性の非正規労働者がその雇用形態を選んだ理由としてもっとも多かったのは「正規の仕事がないから」というもので全体の3割を占めている。一方女性は「家計の補助」でこちらも約3割を占めている。
 男性は正社員としての採用を望んでいてもそれが実現せず、女性は専業主婦が多いという現実を如実に表しているといえるだろう。
 日本では正社員の解雇が事実上禁止されているため、企業はいつでも解雇できる非正規雇用の割合を増やしてリスクを回避しようとしている。また非正規雇用の増加は全体的な賃金を抑制するという結果をもたらすことになる。

 アベノミクスによって物価の上昇が予想される中、政府は、業界団体に異例の賃上げを要請するなど、アベノミクスが実質的な賃下げにつながらないよう必死になっている。だが現実には、今回の非正規雇用の増加に見られるように、実質的な賃金の切り下げにつながる現象が相次いでいる。

 伊藤忠商事は夜間の残業を原則禁止とし、残業の朝型化を進める方針を発表した。早朝に残業をシフトすれば、始業時間という制約があるため、実質的に残業時間を減らすことができる。これによって会社全体の労働コストは大幅に減少することが予想される。
 従来は一部の専門職に適用されていた裁量労働制を、それ以外のホワイトカラーにも実質的に適用する新しい制度について、政府が複数の大企業に打診しているとの報道もある。裁量労働制の恩恵を受けるのは一部のプロフェッショナルだけであり、多くの社員にとっては残業代の減少という形でその影響が顕在化してくる。

 こうした制度の導入は、結果的に賃金の抑制と非正規雇用の増加につながっていく可能性が高い。それは企業の側が、現在議論されている雇用制度改革においては、思い切った雇用の流動化にまでは踏み切らないと考えているからだ。
 日本の正社員の待遇は、非正規社員に比べてかなり高い。企業にとっては、正社員は終身の雇用保証に加えて、給与、賞与、退職金のすべてを負担しなければならない。企業が正社員の採用を抑制し、非正規社員を増加させるのはある意味で経済合理的な選択といえる。というよりも、むしろ日本の労働政策は、正規社員の待遇を維持することに主眼が置かれていると言っても過言ではないのだ。

 雇用の流動化が進まず、正社員に対する高待遇を維持するという現在の労働政策が続く限りは、非正規社員の増加と正社員に対する賃金抑制策が引き続き適用されていくことになるだろう。
 事実上の身分制度になっている正規社員と非正規社員の格差縮小をセットにしない限りは、アベノミクスの賃上げ策はうまく機能しない可能性が高い。

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