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大企業は実は法人税をあまり払っていない!安倍首相の法人減税見直し指示に異論

 

 安倍首相が法人税の引き下げを検討するよう関係府省に指示したとの報道が話題となっている。菅官房長官は「指示した事実はない」と否定しているが、政府内部で検討が進んでいることは間違いないだろう。
 安倍氏は当初、アベノミクスにおける第3の矢である成長戦略について、税収への影響が少ない投資減税を軸にプランの作成を進めるつもりであった。だがこの内容が市場であまり評価されず株価が伸び悩んでいることから、法人税減税にまで踏み込んだ形で検討を始めたものと思われる。当然背後には、減税を強く求める財界の意向や、消費税増税後の景気対策という意味合いもある。

 だが法人税の減税ついては、投資減税と同様、効果は限定的という声が大きい。財務省の調査によると、日本の法人税の実行負担率は約35.64%となっている。これに対してフランスは33.33%、ドイツは29.55%、中国は 25%、イギリスは24%、シンガポールは17%となっており、日本の法人税は相対的に高いとされている。
 諸外国並みに法人税を下げれば、内部留保が増え、設備投資が促進されるというのが減税を検討する理由である。諸外国からの日本への投資が増えるという効果も期待されているだろう。

 だが日本の大企業における法人税の負担は実際にはもっと軽い。製造業を中心に大企業には租税特別措置をはじめとする多くの税控除が適用されており、実質的に20%~25%程度しか法人税を払っていないところが多い。実効税率35%という税金をまともに払っているのは、こうした控除が適用されない中小企業やベンチャー企業だけである。しかもこのような租税特別措置は、何十年も前から適用され続け、特定業界による政治利権になっているものも多い。
 こうした現状を考えると、今から見かけ上の法人税を減税したところで、大きな効果は期待できないという見解には一定の説得力がある。

 諸外国のうち、もっとも企業活動が活発な米国の実効税率は日本よりも高く40.75%となっている。米国は世界一法人税が高い国の一つだが、多くの企業や資金が集まっている。企業や投資家はビジネス環境をまず第一に考えて立地を検討するのであって税率ではない。
 日本は政府の規制が多く、特定の産業が保護されていて、自由な市場とはいえない。そのような閉鎖的な環境にあって、法人税の安さのみを魅力として海外資金を誘致するのであれば、シンガポール並みに法人税を下げなければ目立った効果はないだろう。

 さらに問題なのは法人税を減税した後の財源である。2013年度予算における法人税の税収は約9兆円ある。法人税を減税するとその分が直ちに歳入減になるわけではないが、単純計算では、法人税を5%分引き下げると、1兆3000億円ほど税収が減ることになる。
 税収の減少分を上回る景気拡大と税収増が見込めない限り、2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字にするという政府目標の実現はさらに困難になるだろう。

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