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次世代加速器ILCの日本誘致論。背後には4000億円という巨額の土木工事が存在する

 

 宇宙誕生の謎を研究する次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の日本誘致を目指すILC戦略会議は8月23日、国内での建設予定地として岩手県の北上山地が最適であるとの見解を明らかにした。今後、同地域への建設を目指して、日本政府や諸外国に働きかけを行っていく。
 ただILCの誘致には4000億円ともいわれる巨額の費用がかかる見込み。しかも地下に長大なトンネルを建設するなど、大型公共事業としての側面があり、財政難の最中にこのような巨額出費に合理性があるのか疑問の声も出ている。

 ILCは、高エネルギーの素粒子の衝突実験を行うため、国際協力によって開発が計画されている次世代加速器。宇宙誕生の謎に迫るためには、粒子を光速に近い速度まで加速して衝突させるための実験施設が必要となる。
 従来は日米欧がそれぞれ独自に施設を建設してきたが、あまりにもコストがかかりすぎるため、国際共同でプロジェクトが進められることになった。日本の研究者グループは、この施設を誘致するため、ILC戦略会議を設置して候補地の選定を進めていた。

 加速器を誘致した国は、ある程度プロジェクトの主導権を握ることができるので、日本に施設を建設できれば、相応の学術成果が見込める可能性が高い。だが問題は巨額の建設費用である。施設の建設には8000億円程度の費用が見込まれている。施設を誘致した国は半分程度を負担するのが常識といわれており、もし日本が誘致した場合には、4000億円もの費用を負担しなければならない。しかも施設は完成後も年間数百億円という巨額の維持費がかかるため、費用総額はもっと大きなものになる。

 日本の財政が非常に厳しい中、数千億円の負担はあまり現実的な数字とはいえない。それでも日本誘致という声が大きいのは、背後に莫大な土建利権が存在しているからだ。
 ILCを建設するためには全長30~50キロという長大なトンネルを山間部に掘る必要がある。建設費の相応の部分がこのトンネル採掘費用に充てられる見込みだ。日本は財政難から公共事業の縮小を続けてきており、公共事業の利益団体から見れば、喉から手が出るほど欲しい案件といえる。また自治体も、研究施設を誘致できれば、地域振興につながることから、誘致を望む声が大きい。

 文部科学省の諮問を受けILC誘致について審議している日本学術会議は、現時点では時期尚早という慎重な見方を崩していない。今後2~3年かけて計画を精査して判断していくことになる。ちなみに、諸外国で誘致に手を上げている国はまだないという。

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