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「尖閣諸島は日本の領土である」とのマケイン上院議員の発言はリップサービス?

 

 米共和党の上院議員で米国の政界に大きな影響力を持つジョン・マケイン氏が8月21日来日し、「尖閣諸島は日本の領土だというのが、米議会と米政府の立場だ」との発言を行った。

 マケイン氏の発言は、岸田外相との会談後、記者団とのやりとりの中で出てきた。米政府の従来の見解は「尖閣諸島は日米安保の対象範囲ではあるが、領有権についてはどちらの立場も取らない」というものであり、マケイン氏の発言は、これから一歩踏み込んだものとなっている。
 マケイン氏は米政府の高官ではないが、共和党の重鎮議員であり、米国の安全保障政策に絶大な影響力を持っている。マケイン氏の発言は、尖閣諸島は日本固有の領土であり、それに基づいて実行支配も行っているという日本側の主張を後押しするものとなるだろう。

 ただ、同日にアメリカンセンターで行われたスピーチでは「尖閣諸島の現状を変更しようとするあらゆる動きに反対する」という発言にトーンダウンしており、尖閣諸島は日本の領土であるという発言は、多少のリップサービスであった可能性も高い。
 中国側は、外交部(外務省)の洪磊報道官が「中国固有の領土であるという基本的事実は変わらない」として発言に抗議する声明を出している。だが米国政界の重鎮であるマケイン氏を激しく批判することは憚られたのか、中国メディアの多くは、マケイン氏は過去に失言が多かったとし、今回の発言も「失言」であるとのトーンで報道している。
 米国務省のサキ報道官は、マケイン氏の発言に対して「コメントすることはない」とし「領有権についてはどちらの立場も取らない」という米国政府の立場に変わりはないことを強調した。

 マケイン氏の発言がリップサービスであったにせよ、本音であったにせよ、これだけで米国政府の公式見解が変化する可能性はほとんどないだろう。だがマケイン氏の発言は、非常に重要な意味を持っていることも確かである。
 マケイン氏が強調したかったのは、歴史的経緯として領有権がどちらに帰属しているかということではない。それはアメリカンセンターのスピーチでも示されたとおり「現状を変更するいかなる動きにも反対する」という姿勢であると考えられる。現状というのは、尖閣諸島は日本が実効支配しており、この場所は日米安保の対象範囲であるという事実のことを指している。
 安全保障の世界では、歴史的経緯による領有権の主張よりも、現実の実行支配権の方が圧倒的に重要な意味を持つ。尖閣諸島は日本が実行支配しており、この事実は非常に重い。

 日本としては、歴史的経緯も含めて領有権を主張することは大事だが、それ以上に重要なことは尖閣諸島の実行支配権を維持することである。軍事力の行使は外交の延長線上にあり、外交は経済の延長線上にある。日本は憲法解釈上、これまで軍事力の行使に大きな制限があったが、尖閣諸島の実行支配権は戦後ずっと維持することが可能であった。なぜそれが可能だったのかをもう一度考えて直してみる必要があるだろう。
 現在、集団的自衛権に関する憲法解釈の見直しや憲法改正そのもの関する議論が盛り上がっている。だが中には、手段と目的を取り違えた議論も散見される。現実問題として、尖閣諸島の実行支配権を維持するのはどのような戦略がベストなのか?リアリズムに基づいた議論が必要だろう。

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