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オバマ大統領がシリア軍事介入に慎重なのは、かつてのコソボ空爆の教訓?

 

 シリア政府が化学兵器を使用した可能性が高まってきたことで、米政府はシリアに対する軍事行動の具体的な検討に入った。だがオバマ大統領が依然として軍事行動に慎重であることや、米国の世論が盛り上がっていないことなどから、実現するかどうかは流動的な状況である。

 8月25日、マレーシアを訪問したヘーゲル国防長官は同国に向かう飛行機の中で、オバマ政権の閣僚としては初めてシリアに対する軍事行動の可能性を検討していると述べた。米海軍は駆逐艦マハンを地中海に派遣しており、地中海にはすでに4隻の艦艇が展開する状況となっている。

 ホワイトハウスでは、現在、具体的な攻撃手法について検討が重ねられている。オバマ大統領はこれまで「化学兵器の使用は越えてはならない一線」とし、アサド政権による化学兵器使用が確認されれば、軍事行動も辞さない姿勢を強調していた。
 今回アサド政権が化学兵器を使用したことはほぼ確実といわれていることや、英仏など欧州各国が軍事介入を求めていることなどから、ホワイトハウスも重い腰を上げた格好だ。だが、それでもオバマ大統領は軍事介入に対して、慎重な姿勢を崩していないという。

 その理由は、オバマ大統領自身が中東に対する米国の関与の縮小を望んでおり、シリアへの軍事介入はその動きに逆行すると考えているからである。また現実的な政権運営という観点からも、安易な軍事介入には踏み切らない方が得策との判断がある。それはクリントン政権時代のコソボ空爆の事例が背景にあるといわれている。
 クリントン政権は1999年、内戦状態に陥った旧ユーゴスラビアで激しい人権弾圧を行っていたセルビアに対し、NATO軍を組織して空爆を実施した。コソボ地域からセルビアを撤退させることは成功したが、コソボは破壊し尽くされ大量の難民を生み出す結果となった。また外交的には大きな成果を上げることができなかったことから、軍事介入への効果が疑問視された。特に議論の対象となったのは、米国の国益とはほとんど無縁のバルカン半島地域で、わざわざ軍事介入を行うことの是非であった。

 以前であれば、大量に石油を輸入している米国にとって、中東は世界でもっとも重要な地域のひとつであった。だが近年、米国でシェールガスの開発が進んだことで、米国はエネルギーの輸出国に転じる可能性が高くなってきており、従来の図式が崩れつつある。新しい世界観ではシリアはかつてのユーゴスラビアに近い位置付けということになり、わざわざ介入するメリットは小さいということになる。ホワイトハウスでは、この点を考慮に入れて、コソボ空爆との詳細な比較検討を行っているとされる。

 国内世論の高まりや欧州からの強い要望など、もう一段のアクションがない場合には、オバマ政権は軍事介入に慎重な姿勢を崩さない可能性が高い。

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