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オバマ大統領がシリアへの軍事介入について議会承認を求めたことの本質的意味

 

 オバマ米大統領は8月31日、ホワイトハウスで声明を発表し、シリアに対して軍事介入を実施する方針であることを正式に表明した。ただ、軍事介入には「議会の承認」を求めるとしており、軍事介入の実施は、米議会が審議を再開する9月9日以降に先送りされた。

 今回のオバマ大統領の声明は、以前から指摘されていたように、基本的にシリアに対する軍事介入を望んでいないオバマ大統領のスタンスが色濃く滲んだものとなった。オバマ大統領が軍事介入に際して議会の承認を求めたことは、より慎重に事を進めたいオバマ大統領が選択した一種の戦術といえる(本誌記事「英議会がシリア軍事介入を否決。介入に消極的なオバマ大統領には追い風だが」参照)。

 だが、声明の内容をよく分析すると、政治的テクニックにはとどまらない、オバマ大統領が持つ民主主義に対する価値観を強く反映したものであることが分かる。オバマ大統領は米国における議会制民主主義のあり方についても根本的な問いを投げかけているのだ。

 オバマ大統領は声明の中で「米国はもっとも古い立憲民主主義国家」であるとし、軍事介入の権限は大統領にあるとしながらも「このような重大な決断は議会の承認を得るべきだ」と述べた。また国連安全保障理事会の決議は必要ないとの見解も同時に示している。
 これは、ややもすると聞き逃してしまいがちだが、非常に重要な声明である。米国では、戦争をする権利(宣戦布告する権利)についての論争が建国以来続いており、その根源的権利が大統領にあるのか、議会にあるのかについては、まだ完璧な結論が得られているわけではない。

 実務上は、宣戦布告の権利は議会にあるとされ、議会の承認なしに正式な戦争はできないことになっている。一方、軍事介入は正式な戦争ではなく、これは大統領の一存で決断できる。だがベトナム戦争のように、軍事介入が、事実上、総力をあげた戦争になってしまった例もあり、軍事介入といえども大統領権限で実施してよいのかについては論争の的となっている。

 さらに注目すべきは、軍事介入に対して国連安保理の決議は必要ないと明言している点である。近代国家の概念では、主権国家以上の権力は地球上には存在しておらず、国連はあくまで交渉の場でしかない。米国では単なる交渉の場でしかない国連の決議に、国家の決断が左右されるという事態について、以前から論争になっていた。今回の発言は、あらためて主権国家が持つ権限を明確にしたものといえるだろう。

 オバマ大統領は、戦争する権利は国連ではなく、あくまで国家にあることを強調するとともに、軍事介入のレベルであればそれは大統領権限に属するとした。だが、その行使には議会の承認が必要であるとの見解を示したわけである。これは、民主国家における戦争の権利は基本的に議会に存在するということを、あらためて位置付けたものといえるだろう。

 行政府のトップであり、強大な権力を持つ大統領が、戦争の権利が議会に存在すると明言したことの意味は大きい。大統領制を採用していないにもかかわらず、行政府の官僚組織が突出した権限を持つ日本の政治システムを考えると、オバマ大統領が発したメッセージは重い。

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