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秋にまとまる一連の成長戦略パッケージは、事実上の計画経済へのシフト?

 

 秋の臨時国会に提出が予定されている産業競争力強化法案など、一連の成長戦略パッケージの概要が明らかになってきている。
 安倍首相は9月2日、2カ月半ぶりに再開した産業競争力会議に出席し、秋の臨時国会を「成長戦略実行国会」と位置付け、産業競争力強化法案の成立と減税措置の2つを主要な柱とする方針を明らかにした(写真)。ただ、産業競争力法案と減税措置は、場合によっては利益相反を起こす可能性を内包しており、どのような効果をもたらすのかは未知数だ。

 企業活動を促進させ、競争力を高める政策としては、国家が計画経済的に方向性を決定するやり方と、基本的に市場メカニズムに任せるやり方の2種類がある。前者の代表例は中国であり、後者の代表例は米国ということになる。先進主要国でもフランスは計画経済的、ドイツは市場メカニズム重視となっている。

 両者の最大の違いは、将来についてどの程度予見できるかという基本的な考え方にある。
 計画経済を重視している人は、将来どのような分野が有望なのかについて事前に予見できると考えている。このため、重点分野を国家が決定し、国家主導で支援策を講じればその分野の競争力が強化されると考える。

 これに対して市場メカニズムを重視する人は、イノベーションがどのような分野で発生するのかは事前には予見できないと考える。つまりグーグルやアップルを計画的には作ることは不可能であり、競争力を付けるためには皆が競争するしかないと考えているのだ。したがって、政府は自由な経済活動を保証することに特化し、その中から自然発生的にイノベーションが起こることを期待する。

 途上国の場合、基本的な生活インフラの整備や従来型製造業の発展など、将来の方向性を見通すことが比較的容易であることから、多くの国で計画経済型が採用されている。一方、成熟国家ではニーズが多様化しているため、市場メカニズム型を活用することが多い(計画経済型を採用するフランスは革命政権であることから、社会主義的計画経済の慣習が色濃く残っているという政治的側面が大きい)。

 安倍政権の成長戦略は、この2つの方向性が混在しているという意味で非常に特異な存在といえる。産業競争力強化法案は、地域を限定して部分的に規制緩和を実施する「企業特区」制度の導入、企業再編を必要とする分野を政府が指定し、税制を使って再編を促す制度の創設、などが柱となっている。これはら官僚主導で競争力を強化する計画経済的なスタンスが濃いものといえる。
 一方、減税措置については、償却資産の非課税化やベンチャー投資への減税など、全体的な環境整備に力点が置かれ、市場メカニズムを重視した内容になっている。成長戦略に盛り込まれた施策も、計画経済的なものと市場メカニズム重視のものが混在している。

 安倍政権があえて異なる考え方の政策を混在させているのか、単にまとまりを欠いていて結果的にバラバラの施策が盛り込まれているだけなのかは不明だ。だが安倍首相の真意はともかくとして、現在の日本では計画経済的な施策の影響が大きくなることはほぼ間違いない。市場メカニズムを完全に機能させるためには、個別の減税措置だけでは不十分であり、全体的な規制緩和をセットにする必要があるが、現在の成長戦略にそのような施策は含まれていないからだ。

 このまま成長戦略の議論が進み、臨時国会で法案が可決されれば、日本は事実上、計画経済的な産業政策に舵を切ることになる。産業政策の司令塔は経産省ということになるのだが、彼らが将来を見通す高い能力を持っていれば、日本経済を劇的に回復させることが可能かもしれない。だがもしその逆であった場合、反動はより大きなものになるだろう。
 ちなみに経済産業省は、戦前の商工省や戦中の軍需省、戦後の通産省時代を含めて、計画経済を重視する傾向が強い。だが、サンシャイン計画(オイルショック後の新エネルギー開発)、コンピュータの国産化プロジェクトなど、計画経済的な政策はことごとく失敗している。戦後間もなく、通産省は日本には自動車産業は不要と結論付け、トヨタを倒産に追い込もうとしたことさえあるのだ。
 もちろん過去に失敗したからといって、次も失敗するとは限らない。過去の失敗を乗り越え、経産官僚は将来を見通すことができるようになるのだろうか?

 - 政治, 経済 , , , , , ,

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