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福島原発の汚染水対策に国が470億円を投入。だが抜本的な解決とはほど遠い状況

 

 安倍首相をトップとする政府の原子力災害対策本部は9月3日、東京電力福島第1原発の汚染水漏れ事故について、政府として主体的に取り組むことを決定した。地下水が原子炉建屋に流入するのを防ぐ凍土遮水壁の建設費用および汚染水処理装置の増設費用に470億円を投入する。

 現在、福島原発では原子炉建屋内部に大量の地下水が流入しており、汚染された水が海に流出した可能性が指摘されている。

 建屋内部の汚染水はポンプでくみ上げ、地上のタンクに一時保管しているが、そのタンクからも汚染水が漏れていることが判明し、状況がさらに深刻になってきている。
 東京電力1社だけでは対応できない状況になってきており、国が主導して対策を実施することを決めた。

 今回発表された対策は、問題の根本的な原因である地下水の流入を止めるための方策と、汚染された水を処理するための方策、さらに汚染水が海に流出しないようにするための方策の3つで構成されている。特に大がかりになるのが、地下水の流入を防ぐための措置である。

 具体的には、原子炉建屋周辺の土を人工的にマイナス40度に冷却して凍らせ、凍土の壁を構築して地下水を遮断する方式が想定されている。だがこの方式はこれほど大規模に実施された事例がなく、専門家の中からは効果を疑問視する声が上がっている。
 またこの方式は今後何十年にもわたって周辺の土を冷却し続ける必要があり、莫大な電力が必要となる。また定期的に配管の交換などを行う必要があり、トータルの費用は極めて高額になることが予想される。この方式はもともと大手ゼネコンから提案されたものだが、これを受注できれば、長期にわたって利益が確保できる案件でもあり、下手をすると政治利権にもなりかねないと危惧する声もある。
 政府では、凍土方式の成果を見て、投資対効果が低いようであれば、従来型のコンクリートや粘土による遮水壁への転換も検討するとしている。

 問題はこれだけではない。遮水壁が完成するのは2014年度中であり、今から1年以上も先のことである。それまでの間、溜まった地下水は地上のタンクに一時保管されることになるが、地上のタンクはすでに満杯に近づいている。また一時保管された汚染水を今後どのように処理するのかという目処も立っていない。
 原子力規制委員会の田中委員長は、ある程度の処理と希釈を実施した上で海に放出するのもひとつの方法であるとの見解を示している。工学的には正しい判断と考えられるが、地域住民や国民感情を考慮すると、この方法の実施には困難が伴うだろう。

 今回の政府の対応は、あくまで当面の対策として470億円の予算を措置しただけであり、抜本的な解決の道筋が見えたわけではない。東電の対応が杜撰であったことは間違いないが、政府は責任を回避し東電に事故処理を丸投げしていたのも事実である。原発事故をめぐる日本の無責任体質はそろそろ限界に達しつつある。

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