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出生率に関する内閣府の研究結果。伝統的価値観は出生率向上にあまり寄与せず?

 

 内閣府は8月30日、家族の価値観と出生率に関する研究結果を発表した。伝統的な家族の価値観を重視する人ほど出産意欲が高いものの、第三子以降についてはほとんど変わらないことが明らかになった。少子化対策として、伝統的な家族の価値観を重視しようという動きがあるが、少子化対策で重要な役割を果たす第三子以降の出産については、目立った効果が得られない可能性が高い。

 日本の家族に対する価値観を象徴するものとしてよく引き合いに出されるのが、妊娠をきっかけに結婚するという妊娠先行型結婚、いわゆる「できちゃった婚」である。他の先進各国では、結婚せずそのまま出産するケースが多く、妊娠先行型結婚は日本に特徴的な現象といわれる。
 日本の場合、子供は結婚してから作るものという伝統的価値観が強く、これが妊娠先行型結婚を増やしている要因と考えられている。

 1万人を対象とした調査結果では、妊娠先行型結婚の夫婦の方がそうでない夫婦に比べて、希望する子供の数が多く、出産意欲が高いことが分かった。また実際の子供の数も妊娠先行型夫婦の方が多かった。「結婚して子供を持つべき」という伝統的価値観は出生率の向上に一定の役割を果たしているようだ。

 一方、こうした伝統的家族の価値観と出産の実態について、もう少し細かく見てみると、現実的な子供の数で大きく状況が異なっていることが分かる。
 家族規範を重視する夫婦ほど、第二子までの追加出産意欲は高いが、第三子以降については変わらなくなる。つまり第二子までは、家族規範の重視が出生率向上にプラスの効果があるが、それ以上は目立った効果がないということである。第三子以降については経済的負担が大きく、現実問題として対処できないというのがその主な理由と考えられる。

 急速に進む日本の少子化問題に対して、一部からは伝統的な家族の価値観を重視しようという動きが出ている。実際、年金や医療、生活保護といった日本の社会保障制度は、家族による扶助を大前提としたものになっており、欧州などで見られるような個人完結型にはなっていない。日本は当初から、社会的問題を家族が解決する方式を採用しているのだ。
 その意味で、少子化対策として家族の価値観強化を打ち出すやり方は、従来の延長線上にある方策といってよい。だが今回の研究結果からも分かるように、社会問題を家族にゆだねることには物理的な限界がある。また日本社会は好むと好まざるとに関わらず大きく変質してきている。家族への過度な依存は、不要な従属関係を生み出すリスクもある。

 少子化対策に限らず、社会的な問題解決に対してどこまで家族にゆだねるべきなのか。今求められているのは、こうした根本的な部分に関するオープンな議論である。

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