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7月の国際収支。貿易赤字を投資収益がカバーする成熟国型体質がより鮮明に

 

 財務省は9月9日、7月の国際収支を発表した。最終的な国の利益を示す経常収支は5773億円となり、6カ月連続の黒字となった。円安の進行で原油価格が上昇し貿易赤字が拡大したことから、経常黒字額は前年同月比で約1割減少した。ただ黒字水準はほぼ安定してきており、貿易赤字を投資収益でカバーするという成熟国型体質がさらに定着してきたといってよい。

 最終的な国の収支である経常収支は、おおまかには貿易収支と投資収益の2つで構成されている。高度成長期の日本は輸出で儲けており、多額の貿易黒字を計上していたが、外貨蓄積は不十分であり投資収益は小さかった。

 だが1990年代になると、外貨蓄積が莫大な金額になり海外投資から得られる収益も急拡大した。貿易黒字に投資収益が加わったので、当時の日本の経常収支は、年間10兆円以上の黒字であった。

 その後、日本メーカーの国際競争力が低下し、徐々に貿易黒字が減少、2007年には投資収益が貿易黒字を上回った。その後、日本メーカーの国際競争力低下が急激に進んだことや、震災の影響でエネルギーの輸入が急増したこと、円安で輸入価格が増大したことなどが総合的に作用し、日本は恒常的な貿易赤字体質となった。
 だが円安には海外からの投資収益を増やす効果があるため、貿易赤字を垂れ流しているにも関わらず、経常収支は以前ほどではないが黒字を維持している(年間6兆円程度)。

 これは日本が貿易で儲ける途上国型経済から、投資で儲ける成熟国型経済に移行したことを示している。国際収支には、途上国から成熟国になるにしたがって収支状況が変化するという「発展段階説」と呼ばれる考え方がある。最近の日本は、貿易赤字の定着、所得収支の増加、経常収支の黒字維持という状況になっており、「成熟した債権国」に分類される。これはかつての英国や米国の姿である。

 成熟した債権国では、貿易収支よりもむしろ投資収益(国際収支の用語では所得収支)が重要な役割を果たす。日本が持つ膨大な外貨のポートフォリオをどのように構成するのかで、投資収益は大きく変化するからだ。これまでは、外貨のほとんどが米国債で運用されていた。米国債での運用は日本に安定的な収益をもたらしてきたが、今後、投資収益をさらに拡大しようとする場合には、米国債だけでは利回りが不十分である。
 具体的には直接投資による利子、配当収入をさらに拡大させていく必要がある。今のところ直接投資の多くは、日本メーカーの海外移転に伴うものであり、国内産業の空洞化とセットになっている。今後は、海外企業のM&Aを積極的に進め、収益力のある会社を直接獲得していくような方向性が求められている。

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