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保守思想界の大物である曽野綾子氏の発言に、日本社会はどう反応するのか?

 

 作家の曽野綾子氏による「出産した女性は会社を辞めろ」という趣旨の論文が物議を醸している。曽野氏の全体的な主張は、出産後の社会復帰環境の整備なのだが、直接的な内容としては労働基準法違反にもなりかねないものである。一般的なケースであれば、多くの批判が寄せられるはずである。

 だが、曽野氏の発言については別な意味でも注目が集まっている。曽野氏は著名な作家であるだけでなく、日本財団の理事長を10年も務めるなど、戦後日本の体制派保守勢力の大物でもあるからだ。
 こうした人物の発言に対して、現代の日本社会がどのような扱いを示すのか、一部からは高い関心が寄せられている。

 問題の論文は週刊現代の8月31日号に掲載された。「何でも会社のせいにする甘ったれた女子社員たちへ」と題されたその論文では、産休制度について「会社にしてみれば、本当に迷惑千万な制度だと思いますよ」と一蹴している。
 日本社会は法の支配という概念が薄く、法で禁じられていても、社会風習上黙認されていれば、そちらが優先されることも多かった。だが最近では、法による縛りが強くなり、法に抵触する言動に対しては厳しい社会的制裁が下されるようになってきている。週刊朝日による橋下徹大阪市長に対する差別記事問題はまさにその典型例といえるだろう。
 記事を書いた作家や週刊朝日の編集部は、おそらくそうした意識が薄く、従来の世俗的な感覚をそのまま紙面に持ち込んだところ大バッシングを受けてしまったという状況と考えられる。

 女性の労働環境についても同様なところがある。以前は「女性は子供を産んだら会社を辞めるべきだ」といった発言は、法には抵触するものの、社会的に黙認されてきた面がある。だが最近ではそうした発言は徐々に許容されなくなってきている。

 週刊朝日の場合には、再販制度や記者クラブといったマスコミの特権が批判されている中での出来事だっただけに、同社はバッシングしやすい対象であった。だが曽野氏は週刊朝日とは根本的に社会的立場が異なっている。曽野氏はもともと作家だが、10年もの間、日本財団の理事長を務めていた人物でもある。よく知られているように、日本財団は旧船舶振興財団であり、もともとは故笹川良一氏が設立した団体である。一時は日本の競艇利権の多くを牛耳り、政財界に絶大な影響力を持っていた。
 また夫の三浦朱門氏も著名な作家であり、文化庁長官や日本芸術院院長を務めた大物である。このような保守思想界の重鎮である曽野氏の発言に対して日本社会がどう反応するのかに注目が集まっているというわけだ。

 ただ、女性が出産したら辞めるべきなのかどうかはともかく、一度退職した女性の同条件での職場復帰が困難であるという現状が、出産する女性の自由な選択肢を奪っているのは事実である。その意味で、曽野氏の問題提起そのものは的確であるともいえる。曽野氏の発言を日本社会はどう受け止めるのか?これは現代日本の社会状況を映すリトマス試験紙であるといってもよいだろう。

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