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若者は1社での終身雇用を強く望んでいる。白書が示す若者の意識と政策のミスマッチ

 

 日本の雇用政策は、ライフスタイルや価値観の多様化に合わせて、柔軟な雇用形態を選択できる方向性で進められている。だが次世代を担う若者の意識は、これとは逆に、1社での終身雇用を強く望んでいることが最新の厚生労働白書で明らかになった。その背景には、変化のマイナス面を若者にだけに押しつける歪んだ社会構造があると考えられる。

 2013年版厚生労働白書では、労働政策研究・研修機構による若者のキャリア形成に関するアンケート調査の結果を取り上げている。
  それによると、20代の若者で1つの企業に勤め続けたいと考える人の割合は50%を突破し、1999年の37%から大幅に増加した。
 一方、複数企業でキャリアを形成したい考える人や独立自営したいという人の割合は低下している。つまり、現代の若者は以前と比べて、1社での終身雇用をより強く望んでいるということになる。

 白書では、内閣府が行った「世界青年意識調査」の結果も取り上げている。同調査では「職場に不満があれば転職する方がよい」と考える人の割合が日本は諸外国に比べて圧倒的に低く(米国は日本の2.5倍、フランスは2倍、韓国は1.8倍)、多少の不満があっても同じ会社に勤め続けることを望む傾向が鮮明になっている。要するに日本の若者は、転職を繰り返すことや、正社員にこだわらない形でのキャリア形成を基本的に望んでいない。

 だが、実際の労働政策はこれとは逆の方向に進んでいる。働く人の価値観や環境はそれぞれであることや社会の変化が激しいことなどから、多様化したライフスタイルに対応できる柔軟な雇用形態が必要というのが基本的な考え方だ。これはまさに正論であり、自立した個人やグローバリズムという視点に立てば当然の帰結といえるだろう。
 だが、雇用の流動化を伴うこの考え方は、日本においては本質的な意味ではなく、終身雇用と退職金が保証された正社員という既得権益層を保護するための手段という意味合いが強い。

 政府の規制改革会議は、新しい雇用形態として「ジョブ型正社員」というものを提唱したが、若年層からの評価は低い。それは、正社員に比べて解雇のリスクが高い雇用形態ではないかとの懸念がどうしても払拭できないからである。終身雇用の正社員という他と比べて圧倒的に待遇のよい特権的立場が残っている限り、どんな制度を作っても、結局は皆がその椅子を欲しがるのはある意味で当然のことである。

 1社での終身雇用を強く望む若者の姿勢を消極的と切り捨てるのはたやすい。だが、若者のこうした姿勢の背景には、雇用流動化のマイナス面を自分達だけが引き受けるのではないかという不安が存在している。少なくとも、現在、日本が目指している雇用のあり方と若者の感覚には大きなミスマッチがあることだけは確かである。この問題が解消されない限り、小手先の制度改革を行ったところで、雇用問題の本質的な解決は難しいだろう。

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