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集団的自衛権行使容認に向けた実務作業がスタート。憲法改正論議に与える影響は?

 

 安倍政権が集団的自衛権行使を容認するための本格的な作業に着手した。半年以上開催されていなかった「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)を9月17日に再開、年内にも集団的自衛権の行使を容認する報告書をまとめる。懇談会では今後、具体的な行使の条件など実務的な内容を詰めていく。

 従来の政府による憲法解釈では、現憲法は個別自衛権は認めているものの、集団的自衛権までは認めていないということになっている。
 このため、自衛隊が個別に活動することはできるが、米軍との共同作戦の実施は憲法に抵触することになる。だが現実には、日米安全保障条約に基づいた、米軍との共同作戦が想定されており、この問題をどうクリアするのかが以前から議論されてきた。

 安倍政権はすでに集団的自衛権の行使を容認する方向で動いており、8月2日には政府の憲法解釈を担当する内閣法制局の長官に、集団的自衛権の行使に前向きな人物を起用するなど準備を進めてきた。今回、有識者会議がスタートしたことで、実務的な作業が本格化することになる。

 日本は戦後、保守勢力と革新勢力のイデオロギー対立があり、安全保障問題に関しては独特の政治的な環境が存在していた。個別自衛権と集団的自衛件を分けて議論するという概念は日本独特のものだが、それは平和憲法の下、自衛隊が存在しているという状況に対して、両勢力の政治的妥協として生まれてきたものにすぎない。
 だが、革新勢力のリーダーであった旧社会党は事実上崩壊し、こうした政治的対立はすでに消滅している。国際的に見て、主権国家が集団的自衛権を保有していることは自明であり、行使の容認は時代の流れといってよいだろう。

 むしろ安倍政権による集団的自衛行使容認の動きは、今後の憲法解釈論議に対して大きな影響を与えることになるだろう。憲法改正を求める大きな理由のひとつが憲法9条の問題であった。だが集団的自衛権の行使が合憲ということになれば、憲法9条による実務上の制限は存在しなくなる。少なくとも憲法9条の存在を理由に憲法改正を行うという必要性が薄れてしまうことだけは確かだ。

 集団的自衛権行使の容認に舵を切ったことで、憲法改正論議をより論理的なものにするという効果が期待できるかもしれない。安倍政権の成立以降、日本では憲法改正を求める声が大きくなってきているが、議論の中身はまだ幼稚で論理的といえるものではない。憲法9条の存在が問題だという立場もあれば、米国から押しつけられたという成立過程そのものを問題視する立場もある。中には改正のための改正という、本末転倒な議論も散見される。
 集団的自衛権の行使容認によって、何を目的に憲法改正をするのかという、もっとも重要な論点について、よりはっきりさせることができるはずだ。

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