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総工費9兆円。リニア建設に伴う過剰負債で、JR東海は旧国鉄時代に逆戻り?

 

 2027年に開業予定のリニア中央新幹線の詳細な走行ルートが明らかになった。リニア中央新幹線については、大手シンクタンクが10兆円を超す経済効果があると試算していることもあり、沿線でははやくもリニア効果への期待が高まっている。中には2020年の東京オリンピックの開業までに工期を短縮できないかといった少々「無茶」な要望も出るなど、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。

 だが現実はそう甘くはない。本来国家プロジェクトとして始まったはずのリニア計画だが、結局政府の支援は一切ない。
 JR東海という民間企業1社が9兆円もの建設費用をすべて負担する。リニアを開業しても既存の新幹線から顧客がシフトするだけで、同社の収益にはほとんど貢献しない。JR東海の債務水準は、旧国鉄の債務を引き継いだ開業当初に逆戻りしてしまうのだ。

 そもそもリニア中央新幹線は、国家プロジェクトとしてスタートしたものである。田中角栄元首相による列島改造ブームを背景に1973年に基本計画が了承された。リニア計画が持ち上がった1960年代の日本は、現在とはまるで状況が異なっている。経済成長が続き、東海道新幹線が開業したばかりで、東京-大阪間の輸送力増強が緊急の課題であった。JRは存在しておらず、国鉄がリニア開発を主導しており、名実ともに国家プロジェクトであった。

 だがその国鉄は37兆円の債務を抱えて破綻。税金を投入して債務の処理が行われ、現在のJRに分割民営化された。バブル崩壊以後、日本経済は低迷が続き、当時とは逆に人口の急激な減少が進んでいる。長期的な交通需要の減少が予想される中でのリニア計画となってしまったのである。

 国鉄民営化後、国土交通省を中心に政府内部においてリニア推進を見直す動きが広がった。だが、現実問題として、巨大な政治利権を伴うリニア建設の見直しは容易ではない。リニア推進を正当化するために、大規模災害に備えた迂回ルートの確保、技術開発による国力の増進など、様々な必要性が提唱されたが、先に建設ありきという印象はぬぐえない。
 迂回ルートの確保であれば、従来型新幹線としてのプランや中央線の高速化などもっと多くの選択肢があってよい。また技術開発の推進ということであれば、それこそ国費で実施すべきものだが、国の支援はゼロなのだ。

 ともかく最大の問題は9兆円もの建設費用をJR東海1社が負担しなければならないという厳しい現実である。JR東海にとっては、リニア新幹線を作ったところで大幅な収益増加は見込めない。しかも、ピーク時で5兆円の借金をあらたに抱えることとなり、金利が2%上昇すれば、JR東海の利益はすべて吹き飛んでしまう。もしアベノミクスが成功して2%の物価上昇が実現したら、金利はそれどころでは済まないだろう。

 JR東海は旧国鉄から5兆円もの債務を引き継いでスタートした。約25年の歳月をかけて同社は債務を半分にまで圧縮した。だがリニア建設に伴って、再びJR東海は過剰負債の体質に逆戻りしてしまう。マクロ的には、国が負担できない公共事業を、民営化された国営企業であるJRに転嫁しているようにも見える。リニア建設に伴う負債の額が、旧国鉄債務と同額の5兆円というのはなにやら暗示めいているではないか?

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