ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

五輪で高まる外国人観光客への期待。だが日本は本当に観光立国を望んでいるのか?

 

 日本政府観光局(JNTO)は9月18日、8月の訪日外国人客数を発表した。日本を訪れた外国人客数の推計値は90万7000人となり、前年同月比で17.1%の増加となった。8月としては過去最高水準。7月に政府がビザ(査証)の発給要件を緩和した東南アジアからの観光客が増加したほか、円安で日本の割安感が高まったことなどが影響した。政府は年間の訪日外国人数を1000万人にするという目標を掲げているが、その実現が視野に入ってきた。

 日本では2020年の東京オリンピック開催が決まったこともあり、外国人観光客の増加に対する期待が高まっている。政府目標である1000万人達成が視野に入ってきたことは喜ばしいことだが、もし本当に観光立国を目指すのであれば、この数字は国際的に見てあまりにも少なすぎるというのが現実だ。

 世界の主要国が受け入れている観光客数は日本とは比較にならない。英国は毎年3000万人、米国や中国は6000万人、フランスにいたっては8000万人もの観光客が訪れる。主要国(米国、英国、フラ ンス、ドイツ、日本、中国)はすべて1000万人規模の巨大都市を擁しており、長い歴史と文化を持っている。こうした国のほとんどが観光大国なのだが、ただ一 つの例外が日本なのである。世界屈指の経済力と歴史、文化を持った国で、数百万人しか観光客が訪れないというのは、グローバルに見て異常な状況といってよい。

 その理由はおそらくソフト面にある。外国人観光客対策というとすぐに英語というイメージになるが、中国やフランスなど英語があまり通用しない国が観光大国である事実を考えると、言葉の問題ではなさそうだ。世界経済フォーラムでは世界各国の旅行・観光競争力ランキングを発表しているが、国民の観光との親和性といったソフト面は77位と悲惨な結果となっている。

 日本の宿泊施設では、夜間の出入りができなかったり、食事の時間が制限されるところも多い。レストランなどでも外国人客が来ると言葉が出来ないからといって立ち往生してしまう店員は少なくない。まったく外国語が話せなくても、臆することなく「これがお勧めです」と身振り手振りでコミュニケーションする中国の店とはだいぶ様子が異なっている。日本社会そのものの特質として、生活習慣が異なる人が来ることをあまり想定していないのだ。

 最近では、北海道で講師として招かれ来日したニュージーランドのマオリ族の女性指導者が、アゴにある入れ墨を理由に温泉の入浴を断られるという出来事があった。菅官房長官が「外国の文化に対して敬意を払う必要がある」と異例コメントを行っている。この女性は、北海道で開催されていたアイヌ語の復興を目指すイベントで講師として呼ばれていた人物で、日本文化の象徴である温泉を体験しようと入浴施設を訪れていた。

 ひとつひとつの出来事は小さなことでも、こうした事例が積み重なってくると、最終的には訪日客数にボディーブローのように効いてくることになる。日本以外の主要国は、皆、観光立国として成功しているわけだが、外国人との軋轢を乗り越えて今の状況を実現している。日本が本当に観光立国を目指すのであれば、同じように軋轢を乗り越えるための努力が必要であり、これは市民レベルの課題でもある。

 これが実現できるのであれば、ビジネスにおけるグローバル化の問題もスムーズに解決できる可能性が高い。ただ本当に日本人がこうした社会を望んでいるのか、もう一度自問自答する必要がある。外国との積極的な交流を望まないのであれば、ある程度の貧しさを受け入れる勇気も必要となってくるはずだ。オリンピックの東京開催はこのことを再考するよいきっかけといえるかもしれない。

 - 政治, 社会, 経済 , ,

  関連記事

herikomoney
ヘリコプターマネーを巡る首相官邸の危険な火遊び

 首相官邸周辺でヘリコプターマネー政策をめぐる危険な火遊びが進行している。今のと …

mandela
南アフリカ、反アパルトヘイト運動の英雄マンデラ元大統領の光と影

 南アフリカ政府は6月23日、入院中のネルソン・マンデラ元大統領(94)の容体が …

wallst02
8月の雇用統計は市場予想を下回るもまずまず。9月緩和縮小の可能性は引き続き高い

 米FRB(連邦準備制度理事会)における緩和縮小の判断材料となる最新経済指標がほ …

son
ソフトバンクが米3位の携帯電話会社を巨額買収したワケとは?

 ソフトバンクが米携帯3位のスプリント・ネクステルを買収する方針であることが明ら …

imf201404
米国依存が鮮明になったIMFの最新世界経済見通し。日欧の量的緩和策が次の焦点に

 IMF(国際通貨基金)は2014年4月8日、最新の世界経済見通しを発表した。2 …

sharp
シャープに米クアルコムが出資。だが実態は話題作りだけを目的にした技術の安売り

 経営再建中のシャープが、米国の半導体メーカー「クアルコム」から最大100億円の …

kimujonun04
北朝鮮が核実験を強行した本当の理由とは?水面下で米朝交渉が進展?

 北朝鮮が3回目の核実験に踏み切ったことで、周辺諸国や国連は北朝鮮に対する制裁に …

takuhai
ヤマトが宅配取扱量抑制を検討。ネット通販会社による独自サービス拡大のきっかけに?

 宅配便最大手のヤマトホールディングスが、荷物の取扱量抑制の検討を開始した。この …

akachan
日本経済が人口減少の影響を受けるのはこれからが本番

 厚生労働省は2014年1月1日、最新の人口動態統計の結果を発表した。それによる …

obuchiyuko
小渕経産大臣が辞任。脳裏をよぎる第1次安倍内閣の閣僚辞任ドミノ

 小渕経済産業大臣は2014年10月20日、自身の政治団体の収支が食い違っている …