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東京エレクトロンと米アプライドの「対等」な合併という真の意味は?

 

 半導体製造装置国内トップの東京エレクトロンと、世界シェアトップの米アプライドマテリアルズの両社は2013年9月24日、2014年後半に経営統合を行うと発表した。東京エレクトロンの世界シェアは3位なので、1位と3位が合併してできる新会社はダントツの世界ナンバーワンとなる。

 半導体の世界はスマホの普及で高機能化が進んでおり、製造装置の開発もより大規模な投資が必要となってきている。
 東京エレクトロンは国内では首位だが世界3位と微妙なポジションニングであり、今後の競争激化を考え、アプライド社との統合を決定した。両社の売上げを単純に合算すると、約1兆3500億円となり、2位のオランダASMLの7500億円を大きく引き離すことになる。

 今回の合併の発表に際して、東京エレクトロンの東哲郎会長兼社長は「日米でまれにみる対等合併だ」と胸を張った。一方この発言に対しては一部のメディアから対等とはいえないとの論評も出ている。この見解の違いは、日本と米国の力関係が象徴されていて非常に興味深い。

 東会長の「対等」発言は、株式の合併比率のことを指していると考えられる。今回の合併では、東エレク1株に対して新会社の株式3.25株が、アプライド1株に対して新会社の株式1株が割り当てられる。アプライドの時価総額は東エレクの2倍あるので、最終的な株式比率もほぼ2:1になっている。企業規模に比例して株数が割り当てられているという意味で、両社の株主にとって条件は「対等」ということになる。M&Aの世界では通常、これを対等合併と呼ぶ。
 一方、新会社の中における東京エレクの存在感を考えると、企業規模の比率そのままで3分の1しか残らないことになる。M&Aの専門用語ではなく、一般的な感覚としては、企業規模の大きさのみで判断されることが多いので、その意味では、アプライドの傘下に東エレクが入ったという解釈になる。

 企業規模に比例して株式が割り当てられるのは本来であれば当然のことに思える。だが、東会長がわざわざそれを強調したのは、現実にはそうでないことが多いからだ。米国と日本には国際市場での「国力差」というものがあり、M&Aにおいては米国の株主にとって圧倒的に有利な条件で締結されるケースも少なくない。今回の合併は条件が対等であることから、東社長は胸を張ったというわけである。

 一方、この発言は日本国内向けのレトリックでもある。日米とも、法律上、株式会社の所有者は株主となっているが、日本ではなぜか社会慣習上、会社は従業員のものという考え方が根強い。日本で対等合併といえば、株式の比率のことよりも、漠然と社員の処遇のことを指していることが多い。
 社員の目線で見れば、企業規模が2倍の会社と統合するわけだから対等なワケがない。東エレクの従業員や経営陣は相対的に不利な立場になるのは確実である。だが、株式の統合比率が「対等」であることを、企業規模という意味での「対等」にうまくすり替えることで、米国企業に買収されたという批判をうまくかわすことができる。これは非常に巧妙なコメントなのだ。

 東会長のコメントの巧みさはともかくとして、総合的に考えれば、今回のアプライドとの合併は非常に合理的な選択といえる。株主が不利な状況に追い込まれていないという意味でも評価することができるだろう。海外企業との統合には難色を示す日本企業も多いが、国際市場で勝ち残れなければ存続そのものが危うくなる。こうした事例が今後も増えてくれば、最終的には日本の国益にも大きく貢献するはずだ。

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