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都市在住高齢者の地方施設への移住が検討されている背景とは?

 

 都市部における介護施設不足の解決策として、地方施設への移住を促す動きが活発化している。これに対して、厚生労働省の検討会は「慎重に検討すべきだ」として、無条件の受け入れは望ましくないとする報告書をとりまとめた。

  現在、老人向け介護施設は全国的に不足気味の状況となっているが、首都圏など人口過密地帯では特にその傾向が強い。一方、過疎が進む地方自治体では、都市部の高齢者を受け入れようという動きが一部で活発化している。中には、都市部の高齢者を受け入れる目的であらたに特別養護老人ホームを整備する構想を持つ自治体もある。

 都市部の高齢者の介護などを議論していた厚生労働省の検討会は9月20日、施設が不足する東京23区などに関しては、特定域内での整備を定めた指針を見直し、郊外や他県にも施設を造ることができるよう求めた報告書をとりまとめた。一方で、地方の自治体が施設を整備して高齢者の移住を促す動きが出ていることに対しては「慎重に検討すべきだ」として、無条件の受け入れは望ましくないとした。

 高齢者の受け入れと送り出しのニーズにはかなりのミスマッチがある。受け入れ側はあらたな設備の建設なども視野に入れているため比較的大人数での受け入れを希望している。だが送り出し側は、高齢者本人が移住を望まないケースも多く、限定的な範囲での送り出しを前提にしている。受け入れ側は、施設建設やそれに伴う雇用の確保など産業政策として高齢者を受け入れを考えているのに対して、送り出し側は純粋に福祉の問題として検討しているところに最大の原因がある。

 ただ現実的な問題として、高齢になってから移住を希望する高齢者が多いとは考えにくく、施設ありきで制度が導入された場合には本人の意思に反する移住が強要される可能性がある。また東京といえでも、人口減少によって空き家の数は増える一方である。点在する空き家を活用するのは現実には簡単なことではないが、マクロ的には生活のインフラは十分すぎるほど整っている。わざわざ他の地域に高齢者を移住させる合理的な理由は少ない。

 もし高齢者の移住が、地方の建設、雇用といった視点で検討されている面が大きいのであれば、これは産業政策という別な視点での対応が必要なテーマである。産業政策と福祉政策を混同することは、政策の目的をあいまいにしてしまう危険性があり、望ましくない。

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