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政府の賃上げ要請でも平均給与は上がらない?その理由は非製造業へのシフト

 

 政府は復興特別法人税の前倒し廃止といった企業減税を実施するにあたり、減税分が従業員の賃上げにつながっているか調査を行う方針を固めた。2014年4月以降、主要企業の賃金動向について結果を公開する。

 安倍政権はこれまで法人減税に対しては慎重な姿勢を崩していなかった。だが消費増税による景気の腰折れ懸念が強まってきたことや、財界からの強い要望があることなどから法人減税に踏み切った。
 だが企業優遇との批判が出ることが懸念されるほか、減税を行っても企業の内部留保だけが増加するリスクもある。このため、減税分が賃金増加につながるよう、半ば「強制的」に賃上げを促すための仕組みが今回の賃金公開というわけである。

 市場メカニズムを無視して企業に対して賃上げを強要するとインフレが加速するなどの弊害があるとして、一部からは強い懸念の声が出ている。だがそれ以前の問題として、国民生活という観点においても、政府の賃上げ要請の効果は限定的である可能性が高い。その理由は製造業から非製造業へという大きな人の流れが存在しているからだ。

 日本では製造業の雇用者数は一貫して減少が続いている。2009年から現在までの間に製造業の雇用者数は85万人減少した。一方、非製造業の雇用者数は130万人増加している。製造業で職を失った人の多くは非製造業に吸収されていると考えられるが、問題はその給与の額である。
 製造業は他の業種に比べて給料が高い。一方、非製造業の給料は、独占企業が多い電気・ガスやITといった一部の業種以外では製造業よりもかなり低い。非製造業の中でも雇用者数が多いのは卸・小売りだが、この業界の平均給与は製造業に比べて15%~30%低いというのが現実だ。
 製造業から非製造業に労働者がシフトしてしまうと、労働者全体の平均給与は下がってしまうことになる。このため、政府が賃上げを要請して一部の企業がそれに応じたとしても、全体の賃金はなかなか上昇しない可能性が高い。

 非製造業の給料が安い理由は、製造業に比べて生産性が低いからである。だが困ったことに生産性を向上させると、今度は雇用が失われてしまう。欧州や米国のように付加価値の高いサービス業を育成することが経済全体としては望ましいだろうが、現在の日本ではそれは現実的に難しい。また欧州や米国でも、生産性の向上は結果的に失業率の悪化に結びついてしまっている。

 産業には寿命というものがあり、製造業から非製造業へという流れはおそらく止めることができない。最終的には、優秀な一部の人に集中して稼いでもらうのか、1人でできる仕事を複数の労働者でシェアし雇用を維持するのかという二者択一ということになる。

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