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安倍首相が何度も強調する長州人のDNA。果たしてその怨念はどこに向かうのか?

 

 「志定まれば、気盛んなり」安倍首相は消費増税を正式表明する記者会見の場において、自らの信念について、幕末の思想家吉田松陰の言葉を引用して説明した。日本の政治家で明治維新の立役者を信奉する人は多いが、安倍氏の場合は少し違っている。維新の功労者としてよりも、自らの出自である長州人としての意識が強いことをうかがわせる。

  安倍氏はことあるごとに自らを長州人であると強調している。今回の増税表明でも「私の郷里、長州藩では」とわざわざ故郷について山口県ではなく長州藩と呼んでいる。またアベノミクスにおける「3本の矢」は、いうまでもなく長州藩主である毛利家の始祖、毛利元就の「3本の矢」の逸話から取ったものだ。

 安倍氏の長州藩に対する思い入れは、おそらく、尊敬してやまない祖父の岸信介元首相に強く影響されていると思われる。岸氏も現在の山口県の出身であり、いわゆる戦前の長州閥の政治家であるように見えるが、それほど状況は単純ではない。
 岸氏は、東京帝国大学を優秀な成績で卒業し、商工省(現在の経済産業省)に入省したが、途中で退官し満州国の経済政策の責任者に転じている。当時、満州国は日本の生命線と言われていたが、所詮は荒野が続く大陸の植民地であり、超エリート官僚がわざわざ赴任するところではない。
 岸氏は学歴エリートではあったが、生まれはそれほどの名家とはいえない。当時、政治家になるためには、現在の金額で数億円の裏金が必要といわれており、目立った資金源のない岸氏が目を付けたのが、植民地の満州であった。岸氏にとって長州はアンビバレントな存在だったのかもしれない。

 A級戦犯容疑での収監を経て、結果的に岸氏は首相になることができたが、日本政界の主流派であった吉田茂元首相からとことん邪魔され続けるなど、やはりコンプレックスの多い人生であった。
 安倍氏が所属していた派閥である清和会は岸氏が創設したものだが、吉田氏とその弟子が創設した経世会と宏池会との間で壮絶な派閥争いが何十年も続いてきた。それは吉田氏と岸氏の怨念の争いが両者の死後も終わらなかったからである。同じく清和会に属する小泉元首相が道路や郵便など、経世会が持つ政治利権を徹底的に攻撃したのは、清和会による経世会への復讐であり、これは政治に多少関心のある人なら誰でも知っている事実だ。

 ちなみに、毛利氏はもともと広島が拠点で、戦国時代は日本一の大国であった。だが関ヶ原の戦いで西軍(豊臣方)総大将となってしまった毛利氏は、徳川幕府から徹底的にマークされ、当時の超一等地である広島から僻地の山口に転封させられた。長州人の幕府に対する恨みは相当なものであったといわれる。明治維新とは何のことはない、毛利の徳川に対する復讐劇なのである。

 つまり安倍氏の中には脈々と復讐のDNAが語り継がれており、本人もそれを強く自覚しているようである。だが一方で安倍氏は若い世代の政治家であり、戦前の長州閥はもちろんのこと、戦後の経世会と清和会の権力闘争も肌身で知っているわけではない。果たして安倍氏の心の中には何に対する怨念が渦巻いているのだろうか?

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