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政局化狙い?それとも息子への援護射撃。小泉元首相による脱原発論の背景とは?

 

 小泉純一郎元首相が持論である脱原発論を加速させている。小泉氏は10月1日、名古屋市内で講演し、日本のエネルギー政策について「今こそ原発ゼロの循環型社会をつくる契機となる」と述べ脱原発を強く主張した。9月27日にみんなの党の渡辺喜美代表と会談した際にも「安倍首相が脱原発のリーダーシップを取るべきだ」と発言するなど、このところ脱原発に関する積極的な発言が目立っている。

 小泉氏の一連の言動については、脱原発をあらたな政局にすべく画策している、息子である進次郎氏への援護射撃を行っているなど、様々な見方が浮上しているが、真意は定かではない。だが長い目で見て、脱原発が今後の政局のカギになる可能性は日増しに高まってきている。

 小泉氏は政局に関しては天才的な勘を持つといわれている。「自民党をぶっ壊す」とした2001年の総裁選ではその才能がいかんなく発揮された。小泉氏が思いつきで発言するとは考えにくく、原発問題が今後の政局を占う重要なカギになると小泉氏が確信していることは間違いない。
 だが一方で天才の勘は大きく外す可能性もある。小泉氏は首相になるまで党内では「変人」といわれてきた。対立派閥である経世会の絶対的な利権である郵政の改革をただひとり主張し続けるなど、その行動はまさにドンキホーテであり、以前の小泉氏は首相になる可能性はほぼゼロといわれ続けた政治家だったのである。

 小泉氏の天才的な勘が今回も「当たり」となるのかは分からない。ただ、脱原発については論理的に考えても条件が整いつつあるのは確かだ。
 福島原発の汚染水問題は、事故処理がほぼ半永久的に終わらないのではないかというイメージを国民に植え付ける結果となった。オリンピック招致において放射能汚染が問題視されたことを考えれば、この問題は日本に対してボディブローのように効いてくる可能性が高い。原発停止による産業への影響が懸念されていたが、製造業の海外移転と人口減少によってエネルギー需要は今後減る一方である。

 これに加えて、原子力をめぐる国際情勢も大きく変化している。これまで原子力政策は核戦略と表裏一体のものとされ、米国の核不拡散政策を無視してその是非を考えることはできなかった。だが米国の核不拡散政策は、北朝鮮やイランの核開発で事実上崩壊していることや、日本が潜在的核保有国としての地位をすでに確立したことなどから、戦後的な国際情勢の束縛はほぼなくなっている。
 米国もシェールガス革命の進展によって民間レベルでは脱原発が進んでおり、米国勢の一部からは日本が米国産シェールガスの輸入を増やすよう要望する声も出ている(本誌記事「コスト高から原発撤退が相次ぐ米国。簡単に原発からの撤退を決められるのはナゼ?」参照)。また国内政治という意味でも、脱原発を自民党が提唱すれば、野党は賛成せざるを得ず、結果的に野党の存在を骨抜きにすることも可能だ。

 小泉氏の息子である進次郎氏は、今回の人事で政務官就任という異例の大抜擢を受けた。自民党の地方組織からの支持は絶大であるといわれ、近い将来、首相候補として名前があがる可能性が早くも取り沙汰されている。進次郎氏の今後の政治的キャリアのために、父親が大きな道筋を付けたという見方はあながち間違ってはいないだろう。
 安倍首相への高い支持率から、日本の政界は現在、無風状態にある。だが小泉氏が投げた石ころは、下手をすると大きな波乱要因となるかもしれない。

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