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式年遷宮に現職首相が84年ぶりに参列。「私人」として参列しなければならない理由とは?

 

 20年に1度、伊勢神宮の社殿を造り替える式年遷宮のクライマックスとなる「遷御の儀」が10月2日、伊勢神宮内宮で行われた。式年遷宮は約1300年前から続く儀式で、20年に1度、65ある社殿をすべて造り替え、装束なども新調する。伊勢神宮の社殿は白木なので、この式年遷宮によって常に同じ状態を保つことができる。

 遷御の儀は伊勢神宮のご神体を新しい社殿に移す儀式で、皇族代表の秋篠宮さまを筆頭に3000人が儀式に参列した。今回は安倍首相も参列しており、式年遷宮への現職首相の参列は1929年の浜口雄幸首相以来となる。

 現職閣僚の宗教儀式への参列については政教分離に反するとして一部からは反対の声も上がっている。いわゆる55年体制が崩壊する1990年代以前は、旧社会党が大きな政治勢力を保持していたこともあり、政教分離は政治の一大論争テーマであった。最近はこうしたイデオロギー論争を目にすることは少なくなっているが、部分的にはそうした論争が続いており、菅官房長官は「私人としての参列であり、政教分離に反するものではない」との説明を行っている。

 だがこうした表面的なテクニックに終始した論争の回避はそろそろ終わりにする時期を迎えているといえるだろう。形式的にはともかく、現実問題として安倍首相は「私人」として参列しているわけではない。
 伊勢神宮の主祭神は天照大神であり、いうまでもなく皇室の始祖とされる存在である。また今回移されたご神体は「八咫鏡(やたのかがみ)」なのだが、これは歴代天皇が継承してきた三種の神器の一つである。伊勢神宮が単なる一宗教法人でないことは明らかであり、そうであればこそ首相が参列する意味がある。

 政教分離とは本来、国家権力と特定宗教団体との結びつきを禁じているものであって、社会に定着した宗教行為との関連性までを否定する概念ではない。それでもなお、政教分離に関する批判に対して神経を使わなければならない理由は、結局のところ太平洋戦争中の体制問題がいまだに尾を引いているからである。これは靖国神社の参拝問題にも共通するテーマといえるだろう。

 明治維新後、神社は国家神道とされ、戦時中には非民主的な体制構築に全面的に利用された。日本の前近代性、非民主性を批判したい勢力にとっては格好の攻撃材料なのである。
 このような歪んだ状況を打開するためには、現在の日本は完全な近代型民主国家であることを、内外に向けて、常に説明し続ける努力が必要である。だが現実には、憲法改正論議に際して、立憲主義や法の支配について根本的にはき違えた草案も出てくるなど、民主国家としては何とも心許ない状況だ。

 日本人にとってはあまり触れてほしくないテーマかもしれないが、これを避けて通ることはできない。この問題を乗り越えることができなければ、今後も閣僚は内外の批判をいちいち気にしながら「私人」としての立場でしか伊勢神宮を参拝することはできないだろう。

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