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デフレは構造的要因と譲らなかった白川前総裁はやはり正しかったのか?

 

 日本の長期金利低下が加速している。10月2日の債権市場では10年物国債の利回りが5カ月ぶりに0.65%という低水準を付けた。金利の低下は日銀の量的緩和が順調に進んでいる証拠でもあるが、金融機関が運用先の確保ができず再び国債購入に走っているという側面もあり、微妙な状況だ。

 日銀による量的緩和策の目的の一つは、積極的な市場への資金供給によって期待インフレ率を高め、実質金利を低下させることにある。
 実質金利が低下すれば、理論上、銀行融資が増えるので、設備投資の増加が期待される。また、金融機関が保有する国債を日銀が吸い上げ、代わりに現金を提供することによって銀行の運用を困難にし、資金を融資に振り向けるよう促す効果も期待されている。

 日銀は市場に流通する国債のほとんどを買い上げることになるので、量的緩和の目的という観点からすれば、金利の上昇は望ましいことである。だがこのところの金利急低下はそれ以上の可能性がある。日銀と一緒になって金融機関も国債を買い集めている可能性があるのだ。もしそうなのだとすると、それは銀行がとうとう融資先の開拓を諦めてしまったことを意味している。
 実際のところ銀行の融資は伸びていない。量的緩和がスタートした4月以降、金融機関の融資は増えるどころか0.4%ほど減少している。銀行が融資先の開拓に苦労しているのは間違いないだろう。

 もっとも足元の景気は回復しているように見える。4~6月期のGDPは年率換算で3.8%と良好な数値となり、この結果をもとに消費税の増税も決定された。だが、その中身はというと、ほとんどが2012年度補正予算を用いた10兆円の大型公共事業の効果である。政府が税金もしくは国債という形で調達した資金が一時的に民間に流れているだけなので、短期的には数字を押し上げることができても、長期の経済成長には結びつきにくい。

 結局のところ、内需が拡大し、それに伴う設備投資が増えていかないと、継続的な成長サイクルには入っていかないのだ。内需が拡大するためには、国内産業の新陳代謝が活発になる必要があるが、国内産業の多くは、規制に守られ硬直化したままだ。
 黒田日銀総裁の前任者である白川氏が総裁だった時代、日銀は量的緩和を実施せよとの政治的圧力に対して頑なに抵抗してきた。その理由は、いくら資金を供給しても硬直化した産業構造が変わらない限り、資金需要は発生しないとの判断があったからである。

 量的緩和の弊害にばかり気を取られ、行動することを回避していた当時の日銀に、批判すべき点が多々あったことは事実だ。だが、経済成長の原動力はすべて民間のイノベーションにあり、それを促進する環境を構築することが最優先とした白川氏の見解は、原理主義的とはいえ、やはり正しかった可能性が高い。
 アベノミクスの政策パッケージの中で、産業構造の変革につながるものは、今のところ特区の創設くらいしかない。このままでは白川氏の懸念が現実のものになってしまいかねない。

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