ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

解雇特区は雇用政策というよりも、ベンチャーや外資の優遇策である

 

 安倍政権は成長戦略の目玉の一つである解雇特区の導入に向けて本格的な検討を開始した。近く具体的な内容をまとめ、秋の臨時国会に関連法案を提出する予定だ。
 解雇特区に対しては「首切りが横行する」「ブラック企業の温床となる」などの批判が出ている。だが解雇特区の本質は従業員の処遇ではない。従来型企業に対する、ベンチャー企業や外資系企業の優遇策という、企業の競争力に関するテーマとして捉えるべきものである。

 特区に関する現在の案では、特区内の企業は解雇ルールや労働時間に関する規制が一定条件下で緩和される。
 契約で明文化すれば企業側は従業員を容易に解雇できるようになるほか、残業代のない働き方も認められる。現行では5年を超える有期雇用は無期雇用に切り替える必要があるが、その規制も撤廃される。

 ただし、これらの特例は、開業後5年以内の企業や外国人労働者が3割以上の企業に限定される。つまり、この解雇特区はベンチャー企業と外資系企業の競争力強化を狙ったものなのである。
 ベンチャー企業や外資系企業には、もともと終身雇用という概念が存在していない。特区はこうした企業のグレーゾーン的な現状を、新しい法律で追認することを意味している。

 仮に特区が導入されても、多くの大企業や中堅企業では社員の終身雇用を守ろうとする可能性が高い。わざわざ新会社を作って解雇に追い込むところは少ないだろう。中小企業についてはすでに容赦ない解雇が行われており、特区の導入で大きく状況が変化するわけではない。またブラック企業は、社員が辞職せず劣悪な環境で労働し続けることを望むので、解雇特区は魅力的な存在にはならない。
 結局のところ、一部の大企業やベンチャー企業、外資系企業などが、高い報酬を提示する代わりに、成果が上がらない場合には解雇する雇用形態を労働者に提示する可能性が高い。日本にはベンチャー企業がそれほど多くないことを考えると、実質的には外資系企業の優遇策と考えるのが自然だ。

 安倍政権では法人税の減税も同時に検討を進めており、解雇要件の緩和と法人減税がセットになれば、日本に進出する外資系企業は増えてくる可能性がある。競争力の高い外資系企業が積極的に進出してくれば、いい意味で日本経済の活性化に寄与するはずだ。
 だが一方で、こうした政策は、外資系企業だけがメリットを享受しているという印象を生みだしかねない。今回の特区構想は、日本全体で雇用制度改革を導入できないことに対する妥協案として産業競争力会議で浮上してきたものである。妥協の産物として生まれた不完全な「構造改革」は危ういバランスの上に成り立っている。

 - 政治, 経済 , , ,

  関連記事

kosokudoro02
財政投融資のあり方に関する議論が財務省でスタート。焦点は官製ファンドなど産業投資

 財務省は従来の財政投融資のあり方を検証し、今後の方向性を見極める作業に着手した …

mof03
法人減税は安倍政権の本当の「顔」を知るリトマス試験紙

 法人税減税の焦点である課税ベース拡大に関する議論が本格化している。政府の税制調 …

intelhead
インテルがアルテラを2兆円で買収。金額は割高だが意味のあるM&A

 半導体世界最大手の米インテルは2015年6月1日、半導体のファブレスメーカー( …

piketishasin
日本の所得上位1%が年収1300万円という識者の指摘は本当か?

 ピケティ・ブームが続く中、日本の所得上位1%は1300万円からという数字がネッ …

dendokogu
法人向けアマゾンビジネスの最終目標はアスクルではなくモノタロウ?

 これまで個人の利用者を主なターゲットとしてきたアマゾンが、いよいよ法人向けのサ …

otukakagu
大塚家具のお家騒動。ガバナンスという点では久美子氏が圧倒的に有利だが

 大塚家具の経営権をめぐる内紛が続いている。同社は3月下旬に株主総会を控えており …

abe
安倍総裁が景気が悪い場合の消費増税中止を示唆。狙いは予算バラマキの継続的な拡大

 自民党の安倍総裁は、2014年4月に実施される消費税増税について、GDPの数字 …

keizaizaisei201511
GDP600兆円の具体策について議論始まる。最終的には3%の賃上げで実現?

 安倍首相が「新三本の矢」で掲げた名目GDP600兆円の目標について、その具体策 …

abesenkyo201412
衆院選は予想通り与党が圧勝。ただ今後の政治日程が厳しいことに変わりはない

 第47回衆議院選挙は大方の予想通り、自民・公明両党の勝利となった。とりあえずア …

kyuyomeisai02
今年の春闘も昨年に引き続き高い伸び。全体への波及効果はどのくらいか?

 経団連は2015年4月16日、2015年の春闘について1次集計を取りまとめた。 …