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日本の国際収支状況から見えてくる、今後の日本企業が進むべき道

 

 財務省は10月8日、8月の国際収支を発表した。最終的な国の利益を示す経常収支は1615億円の黒字となったが、前年同月との比較では黒字幅が大幅に減少した。エネルギー関連の輸入が増加し貿易赤字が増大したことや、円安で増加していた所得収支が減少したことが主な原因。ただ所得収支の減少は一時的な要因である可能性が高く、海外からの投資収益で経常黒字を確保する構図は継続していると考えられる。

 貿易収支は8859億円の赤字となった。前年同月比で赤字幅は2223億円拡大しており、8月として過去最大となった。
 赤字が増えた原因は輸入の増加である。輸入額は前年同月比16%増の6兆4126億円となり、増加は10カ月連続。これまでと同様、中東からのエネルギー関連の輸入が伸びた。一方輸出は前年同月費14%増の5兆5267億円となった。北米向けの自動車輸出が堅調だったことが主な要因。
 エネルギー関連の輸入増加と自動車関係の輸出増加はここ最近に共通した傾向といえる。

 貿易赤字を海外の投資収益でカバーする体質も同じだ。海外への投資から得られる利益を示す所得収支は1兆2530億円となり貿易赤字を上回っている。所得収支は円安を背景に増加が続いてきたが、今回は黒字幅が減少した。ただこれは海外への支払い増加が原因であり、一時的な要因である可能性が高い。

 日本は、貿易赤字を投資収益でカバーする成熟国型の国際収支形態にすでに移行しているが、この状態をうまくキープできるかは投資収益の利回りにかかっている。現在、日本の対外債権は200兆円ほどあり、そこから得られる投資収益は昨年は14兆円に達している。これは利回りに換算すると約7%に相当する。この金額を維持していくためには、継続的な海外直接投資の実施が重要である。

 これまで日本の直接投資はアジアへの工場移転に伴う現地法人への出資が中心であった。だがアジア移転した工場はやがて価格競争力を失う運命にある。ほぼ恒久的に投資収益を得る方法は、やはり海外企業のM&Aということになる。
 現在、日本からの直接投資金額の比率はアジア、北米、欧州でほぼ同じ割合となっている。ただ今年に入ってからはソフトバンクによる米スプリント買収などがあり、北米の比率が上昇している。海外企業のM&Aを強化するという点では、欧州と北米の比率がもう少し高い方がよいだろう。先月発表された住宅設備大手LIXIL(リクシル)によるドイツ企業買収のような事例が相次げば、海外からの投資収益も安定的なものになってくるはずだ。

 これまでグローバル化は世界市場で日本企業が日本方式を武器に戦うというイメージで捉えられてきた。だがこれからは発想の転換が必要である。日本企業が戦いを挑むのではなく、すでに海外で安定的に収益を上げている会社を金融商品として購入するのである。それだけで日本経済には大きなプラスになるのだ。

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