ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

次期FRB議長はイエレン氏。総じて高評価だが、リベラルな面を危惧する声も

 

 オバマ米大統領は、来年1月で退任するバーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長の後任として、現FRB副議長のジャネット・イエレン氏を指名する。就任には議会承認が必要だが、承認する方向で固まりつつあり、議長就任はほぼ確実とみられる。正式に就任すれば、FRB初の女性議長となる。

 当初オバマ大統領は、サマーズ元財務長官を最有力候補として検討していた。サマーズ氏は、クリントン政権時代に財務長官を、オバマ政権1期目に国家経済会議(NEC)委員長を務めた実績があり、オバマ大統領はその能力を高く評価していた。
 だがクリントン政権時代に金融規制緩和を強力に推進しており、今回の危機の原因を作った張本人であると一部から批判されていた。またサマーズ氏は女性差別発言など問題が多く、議会とのコミュニケーション能力も懸念されていた(本誌記事「次期FRB議長最有力候補サマーズ氏が無念の辞退。理由はズバリ、傲慢不遜な性格」参照)。結局、サマーズ氏から指名を辞退する申し出があり、人事は振り出しに戻っていた。

 イエレン氏は、中央銀行での経験が長く、バーナンキ議長の片腕として量的緩和策を支えてきた一人である。能力的にも経験的にも申し分ない。また、イエレン氏はコンセンサスを得ることを重視する人物といわれており、現在のバーナンキ議長とも通じるところがある。イエレン氏が就任すれば、FRBの政策に大きな変化は生じないという意味で、市場の安心感は高いと考えられる。

 だがこうした安心感が逆にマイナスに作用する可能性もある。FRBはリーマンショック以降、継続的に行ってきた量的緩和策を縮小するタイミングにある。従来とは真逆の政策に転換するタイミングであり、コンセンサス重視型の運営が必ずしも効果的に作用するのかは保証の限りではない。

 特に懸念されるのが、イエレン氏のリベラルな側面である。イエレン氏は多くの経済指標の中でも雇用関連を特に重視しており、失業率に対する関心が高いといわれる。イエレン氏は量的緩和の縮小について、雇用情勢がまだ不透明であることから慎重なスタンスを崩していない。市場関係者の多くは、イエレン氏は雇用指標に明確な改善が見られるまでは緩和縮小を実施しないと考えており、その意味で彼女に大きな安心感を抱いている。
 だが米国が着実に景気回復しているのは事実であり、もしかすると今回の景気回復は、かつて90年代に見られたようなジョブレス・リカバリー(雇用なき景気回復)である可能性も高くなってきている。もしそうであった場合、イエレン氏が雇用指標にこだわりすぎてしまうと、想像以上にインフレを加速させてしまう危険性がある。景気の局面が変わろうとしている今、イエレン氏のキャラクターが必ずしも最適であるとは限らないのだ。

 もちろんこうした懸念は杞憂に過ぎないのかもしれない。ただバーナンキ氏が就任した時に比べると、イエレン氏に対する周囲の評価はかなり高いといってよい。過剰な期待は失望を生む原因となる。米国経済の現状と量的緩和縮小についてイエレン氏がどのような見解を示すのか、冷静に判断していく必要があるだろう。

 - 経済 , , ,

  関連記事

nenkin
年金運用益が過去最高。だが運用原資は毎年4兆円ずつ減少しているという事実

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は7月2日、2012年度の運用状況を …

fxkisei
金融庁が規制強化へ。ハイリスクなFX投資がここまで普及している国は日本だけ

 このところ金融業界に対する指導を強化している金融庁が、今度はFX(外国為替証拠 …

factoryline
新興国の失業率が増加傾向。世界経済の枠組みは大きく変わりつつある

 ILO(国際労働機関)は2014年1月21日、雇用情勢に関する年次報告書を発表 …

trumpgikai
トランプ大統領の議会演説は想定通りで市場には安心感。ただ減税額は調整が必要か?

 トランプ米大統領は2017年2月28日、米議会において初の演説を行った。総額1 …

tosho05
個人投資家向けの優遇税制(日本版ISA)が前途多難な状況

 小口の個人投資家向け優遇税制である日本版ISA(少額上場株式等に係る配当所得及 …

frb
10月のFOMC。予想外に強気で「やはり年内利上げ」との声も

 FRB(連邦準備制度理事会)は2015年10月28日に開催したFOMC(連邦公 …

shukatsu
就活は4年生からと政府が要請。だが建前を並べたところで、現実問題は解決しない

 政府は、大学生の就職活動の解禁時期を現在の3年生の12月から、4年生の4月に変 …

billgates
マイクロソフトのトップ交代。ゲイツ氏は退任ではなく、実は現場復帰?

 米マイクロソフトは2014年2月4日、同社のナデラ上級副社長が最高経営責任者( …

sagawa
今注目の佐川男子。だがヤマトのドライバーとはなぜキャラが違うのか?

 いま注目の佐川男子。だが運送大手でライバルのヤマト運輸のドライバーはなぜか「ヤ …

okane
スイスで経営者の高額報酬に制限。だが役員報酬が世界で最も割高なのは日本企業だ

 スイスで3月3日、企業経営者の高額報酬を制限するか否かを問う国民投票が実施され …