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OECDによる能力調査。日本人は3分野のうち2分野で1位なのだが、何とITスキルでは?

 

 OECD(経済協力開発機構)は10月8日、世界24カ国を対象した国際成人力調査の結果を公表した。この調査は、各国の成人を対象に、仕事や日常生活で必要とされる汎用的スキルを評価するというもの。日本は調査対象となっている3分野のうち「読解力」と「数的思考力」で1位となった。だが「ITを活用した問題解決能力」は10位と大きく順位を下げる結果となっている。
 極めて高い基礎能力を持っているにも関わらず、ITスキルが足を引っ張る構図が明らかになった。これは現在の日本経済の姿を反映しているともいえる。

 国際成人力調査は、読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力という3つの分野で評価が行われる。
 読解力は「電話のかけ方の説明を読んで指定された相手に電話をする」、数的思考力は「商品の生産量に関する表を見て、グラフを作成する」といった内容がテストされる。ITを活用した問題解決能力では「指定された条件を満たす商品をインターネットで購入する」といった作業が想定されている。

 日本人は、読解力と数的思考力の両方の分野で1位となり、基礎的な能力が極めて高いことが証明された。日本の初等中等教育の水準が高いことは、以前からよく知られており、これはある意味で当然の結果といえるかもしれない。
 だが問題はITを使った問題解決能力である。この分野では日本は急に順位を落とし10位になってしまう。ITについてはパソコンを使った回答者と紙の回答者の割合が国によって異なるなど、条件の違いがあり、結果は一概には評価できない(PC回答者のみを対象とした平均点の比較では日本は1位になる)。だが、ITの活用に苦手意識を持っている日本人が多いということはこの調査からも裏付けられたといってよいだろう。

 読解や数的思考力は、どちらかというと学校の勉強に近いイメージだ。一方、ITを使った問題解決能力は、実践的な内容といえる。調査結果は、学校の勉強は得意だが、実務面での能力が低いという日本人のイメージをよく反映したものといえる。また日本人は、年齢が上がるにつれて成績が落ちる割合がOECD平均よりも高いという特徴がある。日本企業では中高年になると途端に仕事の能力が落ちる人が多いとよく言われるが、これもあながち嘘ではないことが分かる。

 日本企業は高い技術を持っていながら、国際競争ではそれをうまく生かすことができないと言われている。基礎的な学力は重要だが、IT化された時代には、既存の知恵をうまく組み合わせ、問題を解決していく能力が求められる。基礎学力に偏重した日本の教育システムには改善の余地があるという意見には、一定の説得力がありそうだ。

 ちなみにこうした学力テスト的な比較では、欧州の小国が上位に入ることが多い。一方、大国は価値観やライフスタイルが多様化しており、画一的なテスト結果は良くないことがほとんどだ。実際、今回の調査でも日本以外で上位を独占しているのは、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、オランダ、ベルギーといった国々だ。
 ドイツ、米国、フランス、英国などは読解、数的思考力では多くが15位以下となっており、大国で上位に入っているのは日本だけである。だがITの問題解決能力になると状況が変わる。ドイツやイギリス、カナダといった国が日本よりも上位になるのだ。

 こうした単純なテストだけで教育システム全体を論じるのは少々危険ではあるが、もし日本企業の国際競争力に何らか問題があるのだとすると、大国になったにも関わらず、小国型の社会/教育システムを維持しているというあたりに問題解決の糸口がありそうだ。

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