橋下市長による朝日新聞との全面対決が意味するもの
橋下徹大阪市長は17日、実父の出自などを報じた週刊朝日の記事について「きちんと考え方をお聞きするまで、朝日グループへの質問には答えたくない」として、朝日新聞社グループの取材を拒否することを明らかにした。
橋下氏が反発しているは、ノンフィクション作家の佐野眞一氏らが週間朝日に連載している「ハシシタ 奴の本性」という記事。内容は、橋下氏の実父の縁戚者のインタビューや家系図を掲載し、橋下家のルーツについて解明するというもの。橋下氏の実父は、被差別部落の出身で、暴力団に所属していたともいわれており、記事はこれをベースに議論を進めている。
これについて橋下氏は、「実の父親に僕は育てられた記憶がない。僕の今の政治的な行動について、父親の人生が影響しているというなら、それはナチスで行われた血脈主義や身分制に通じる恐ろしい考え方だ」と強く批判した。
佐野氏は、在日韓国人であったソフトバンクの孫正義社長の生い立ちを詳しく書いたルポで名前を売ったノンフィクション作家。本人の出自や生い立ちをネチネチとしたタッチで描くことを得意としている。
いわゆる古くさいタイプのノンフィクション作家なのだが、問題はわざわざ佐野氏に執筆を依頼した朝日新聞の編集方針である。
週刊朝日に限らず、週刊誌各誌は橋下氏に対してかなり感情的な批判を繰り返してきた。このうち結構な割合が、橋下氏の出自に関するもので占められている。
週刊誌も商業ジャーナリズムである以上、読者の関心の薄いテーマを扱っても意味がない。橋下氏の出自に関する批判記事の背景には、まだ多くの国民に残っている差別意識があると思われる。
野中広務元官房長官など、被差別部落出身の政治家はこれまでも存在した。だがこのタイプの政治家の多くは旧来の利権調整型で、フロントに立つようなタイプではなかった。
これに対して橋下氏は、大胆な規制緩和を提言したり、官僚主導システムの破壊を目論むなど、まったく新しいタイプの政治家である。
これまでの利権を失いかねない既得権益層が橋下氏に本能的な恐怖を感じ、普段は口にすることのない差別意識が一気に表面化しているものと思われる。
米国や欧州にも出自に関する差別が存在していたが、グローバル化の進展や市場のオープン化によって、近年急速にその意識が薄れつつある。市場のオープン度合いと差別意識が反比例の関係にあることは国際ビジネスの世界では常識となっている。
橋下氏の登場と出自に絡んだ旧来メディアとのバトルは、遅ればせながら日本もグローバル化とオープン化が進み始めたことを示しているのかもしれない。
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