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創造か破壊か?新国立競技場のあまりの奇抜さと巨大さに各方面から異論噴出

 

 2020年の東京オリンピック開催が正式決定したことで、メイン会場となる新国立競技場についてにわかに注目が集まっている。これまでは開催そのものが不確実だったため、競技場に対してあまり関心が寄せられてこなかったが、いざ開催が決まるや、あまりに巨大で斬新なデザインに賛否両論が一気に噴出しているのだ。

 新国立競技場は、現在の国立競技場と周囲を拡張した用地11万平米に総工費1300億円をかけて建設が予定されている(建設費は2000億円になるとの見方もある)。収容人員は8万人以上と現在の国立競技場の6万人を大幅に上回っており、建物の延べ床面積は五輪史上最大規模になるという。
 カブトガニを思わせるかなり斬新なデザインに驚いた人も多いかもしれないが、著名建築家を含め、このプランに対しては再考を求める声が上がっている。

 日本のモダニズム建築を代表する建築家の一人で、ニューヨークのワールドトレードセンターの跡地に立つ超高層ビルの設計などを手がけた槇文彦氏は、新国立競技場のプランについて批判的な論文を関係誌に掲載している。
 槇氏は、建物があまりに巨大すぎて神宮外苑の景観を破壊してしまうことや、周囲の道路アクセス能力などから災害時の安全性に疑問があることなどを指摘している。またオリンピックのメイン会場という国を象徴するプロジェクトでありながら、情報公開や国民の声を反映させる手続きが不十分な点についても疑問を呈している。
 槇氏はオリンピックの開催そのものを批判しているわけはなく、この建物が広大なスペースのある臨海地域に建設されるのであれば何の問題もないとしている。あくまで神宮外苑という、特殊な場所に対する観点からの批評である。

 確かにCGで描かれた完成予想図だけを見れば、デザインが斬新で奇抜であることしか分からない(写真上)。
 だが、現在の神宮外苑にどのように建物が配置されるのかを見てみると、新しい競技場は、現存する道路や庭園をすべて潰してしまい、周囲を圧倒する規模になっていることがわかる。

 美しい銀杏並木と周辺の建造物が調和している外苑の景観が台無しになってしまうという槇氏の指摘はそれなりに説得力がある(写真左)。

 コンペで最優秀となった今回のプランは、イラク出身の女性建築家ザハ・ハディド氏の手によるもの。今回のコンペは広く公募するという趣旨だったが、実際には応募要件が極めて厳しく、限られた候補者の中からの選定というのが実態である。そうなってくると、日本建築界の大物で、プラン選定の審査員長を務めた安藤忠雄氏の影響はかなり大きいと考えてよいだろう。

 安藤氏は今でこそ、表参道ヒルズを手がけるなど、日本を代表する建築家となっており、今回の審査委員長就任もその社会的地位を反映したものと考えられている。だが安藤氏はもともとプロボクサー出身で世界を放浪していたという特異な経歴の持ち主である。建築もすべて独学で学び、ゲリラ的、挑戦的な作品を数多く残すなど、アナーキスト的な存在の建築家であった。
 建築ファンの中からは、今回の新国立競技場のプラン選定には、既存秩序の破壊を意図する安藤氏の価値観が色濃く反映されているのではないかと冗談半分に邪推する声も出ている。

 ちなみにザハ・ハディド氏は、設計があまりに斬新で実際の施工段階になると、当初のプランがなかなか実現しない建築家ともいわれている。今回のプロジェクトも、実際にプランが具現化してくると様々な現実的課題が浮上してくるだろう。最終的な設計図が出来上がった時には、だいぶ牙が抜かれたものになっているのかもしれない。

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