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人民元のロンドン直取引を通じて英中が急接近。チベット問題は完全に封印?

 

 英国のキャメロン首相がチベットのダライ・ラマ14世と会談して以来冷え込んでいた英中関係に、修復の動きが出てきた。きっかけは人民元のロンドンにおける直接取引の開始。英国がこだわってきた中国の人権問題を事実上封印することで、人民元の本格的な国際化が進展する可能性が出てきた。

 中国を訪問したオズボーン財務相は2013年10月15日、中国の馬凱副首相と会談し、ポンドと人民元の直接取引を実施することについて合意した。
 ロンドンを欧州における人民元取引の中核と位置付け、人民元取引を活性化させる。また英国は中国の投資銀行による英国での事業拡大を容易にする特別措置も併せて発表した。金融面を通じて英中関係を強化させたい意向だ。

 中国は歴史的には英国との関係がもっとも密接だったが、香港の返還以降、英国との関係は希薄になっていた。2012年5月にキャメロン首相がチベット仏教の最高指導者で独立運動のリーダーであるダライ・ラマ14世と会談したことに中国側が猛反発。それ以来、英中関係は完全に冷え切ったままだった。
 最近ではドイツがチベット問題など中国が抱える人権問題を黙認し、経済外交を優先する方針を打ち出したことで、中国との距離を急速に縮めていた。フランスもそれに続いたことから、中国の人権問題を指摘するのは英国だけという状況になっていた。今回の財務相の中国訪問はこうした状況を打開することが狙いといわれている。

 ただ、今のところオズボーン財務相の訪中に対する中国側の態度は冷淡だ。オズボーン財務相は訪中前に、中国要人の誰とも会談できないのではないかという噂さえあった。中国は親中的な国とそうでない国で露骨に外交上の対応を変える戦略を実施しており、現在のところ、英国に対してはまだ冷淡な態度をとり続けている。
 また、人民元の直接取引についても、欧州ではまずはロンドンからというのが自然な流れであり、特に英国との接近を象徴する出来事というわけではない。日本ではあまり知られていないが、ロンドンの為替取引の規模は突出しており、世界の為替取引はロンドンを中心に回っているといっても過言ではない。ロンドンの1日あたりの為替取引高はニューヨーク市場の2倍、東京市場の6倍もの規模がある。人民元を国際化する以上はロンドンでの取引を拡大する以外に方法はないのが現実なのだ。

 今回の英国と中国の合意は、英中の接近という政治的なテーマとしてではなく、人民元の本格的な国際化の第一歩と捉えた方がよいだろう。英国との関係改善が進むにつれて、徐々にではあるが、人民元の国際化は進んでくる可能性が高い。日本への影響という意味では、英国と中国の外交関係よりも、今後ロンドン市場を通じて人民元が本格的に取引されることのインパクトの方が大きいだろう。
 今回はまだ小さな合意にしか過ぎないが、将来的には今回の英中合意が、人民元国際化のひとつのきっかけとして認識されることになるかもしれない。

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