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大型の公共事業がかえって内需拡大を邪魔している?求人倍率改善のウラ事情

 

 多くの国民にとってあまり実感が湧かないが、各地で人手不足が深刻になっている。厚生労働省が発表した最新(8月)の有効求人倍率は前月比0.01ポイント上昇の0.95倍となり、6カ月連続で改善した。これはリーマン・ショック前の2008年に並ぶ水準である。それだけ人手不足であれば、賃金は上昇しそうなものだが、そう簡単にはいかない事情がある。

 求人倍率が改善している最大の理由は、大型の公共事業によって建設需要が増大しているからである。
 政府は今年2月に総額10兆円の補正予算を成立させ、大型の公共事業を次々に実施している。これまでデフレが長く続いたことや、公共事業のムダが批判されてきたことから、ここ10年公共事業は減る一方であった。このため建設関連の人材は減少していたが、そこに突然、大型の受注が舞い込んだことで、一気に人手不足となった。
 これに輪をかけたのが、消費税の増税である。増税を前にしたマンションの駆け込み需要が増大し、建設作業員の不足に拍車をかけた。9月のマンション販売戸数は前年比で77%も増加しているのだ。

 産業別の新規求人数の対前年比は、建設業が9.4%、派遣業を含むサービス業が12.8%となり大幅な伸びを見せた。一方、生活関連サービス業、情報通信業などは前年比マイナスとなっている。人手不足は建設関係に偏っていることが統計からも分かる。
 建設関係の人手不足は、実は他の業界に思わぬ影響を与えている。小売業界や外食業界が新規出店を実施しようとしても、建設作業員を確保できず、出店を断念もしくは延期するという事態が発生しているのだ。これでは、せっかく内需拡大の芽が育っていても、公共事業がそれを邪魔していることになってしまう。

 内需関連の企業各社が人手不足に悩みながらも賃上げに躊躇しているのは、このあたりに理由がある。こうした特需は公共事業が終わってしまえばなくなってしまう。公共事業の終了や消費税増税による反動が大きいことを危惧して、賃上げに踏み切れないのだ。

 安倍政権では企業の賃上げの実態調査を行う方針を表明しており、事実上、企業側に賃上げを強要している。経済学的な見地や経済活動の自由という立場からこれを批判する声も出ているが、その是非はともかくとして、政府が強制すれば賃上げは実現できると考えられる。
 だが本質的なニーズがない中で、政府が賃上げを強要すれば、確実にインフレは進むことになる。多くの国民にとって、目先の賃上げが実現しても、インフレが加速してしまえば、生活面での苦しさはむしろ大きくなるかもしれない。

 安倍政権は、量的緩和策という金融面での新しい政策を除けば、基本的に財政で需要を作り出す、従来型のケインズ政策を全面的に採用している。だが公共事業というハコモノに過度に依存したやり方は、早くも各方面に歪みをもたらしている。

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