ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

英国の原発事業に中国が過半数の出資。日本の原発メーカーの戦略にも影響?

 

 英国と中国は10月17日、英国に建設する次世代原発の運営企業に中国が過半数の出資を行うことを認める覚書に署名した。中国を訪問したオズボーン財務相が明らかにした。来週にも具体的なプロジェクトの認可が下りる見込み。
 英国は、先んじて中国との経済連携を深めているドイツやフランスとの遅れを挽回すべく、このところ中国に急接近している。英国の原発事業は、日本の原発メーカーが今後の生き残りに期待を寄せている分野であり、日本の原子力産業の将来にも微妙な影響を与えそうだ。

 英国はこれまで、チベット問題など中国が抱える人権抑圧問題に厳しい姿勢で臨んできた。
 一方ドイツやフランスは、中国のこうした非人道的な側面をすべて黙認し、経済外交を優先させている。このままでは中国とのビジネスチャンスをドイツやフランスにすべて取られてしまうとの焦りがあり、英国は中国の人権問題を黙認する方向に外交政策を転換させている。
 10月18日には人民元とポンドの直接取引や、中国の金融機関のロンドンにおける特別待遇などを発表したばかりだ(本誌記事「人民元のロンドン直取引を通じて英中が急接近。チベット問題は完全に封印?」参照)。

 ただ中国側の姿勢はかなり高圧的で、遅れてすり寄ってきた英国には厳しい姿勢を崩していない。今回、原発の運営プロジェクトに対する中国の出資を発表したわけだが、実情はもう少し異なる。原発の運営を英国から請け負うのはフランスの電力公社であり、そのパートナーとして中国が割り込む形となっている。最初に仏中の連合ありきの話なのである。

 原発の運転という安全保障上、極めて重要なプロジェクトに対する中国の過半数出資を認めた今回の覚書に対しては英国内でも一部から批判の声が上がっている。またこの原発からの電力の買い取り価格には下限が設定されており、中国とフランスは絶対に儲かるようなスキームになっている。だが英国としては、資金調達を最優先するため、こうした不利な状況は受け入れる方針であり、大方の国民もそれを支持しているようだ。

 中国企業の英国原発事業への参入は日本にも微妙な影響を与える可能性がある。日本の原発政策が迷走していることから、日立や東芝など原発メーカー各社は、こぞって英国の原発運営会社を買収している。英国の原発運営事業を通じて、英国への原子炉輸出に期待を寄せているのだ。ここに中国企業が割って入ることになると、こうした日本メーカーの戦略も練り直しが必要となるかもしれない。
 英国は安全保障上の懸念があるとして米国が入札への参加中止を勧告した中国のIT企業ファーウェイを自国に積極的に誘致している。また、フランス政府は、経営難に陥っているフランスの自動車メーカー「プジョー・シトロエン」に対して、中国が救済出資を実施する方向で協議を進めている。中国の欧州における存在感が急激に高まっていることは間違いないだろう。

 - 政治, 経済 , , , ,

  関連記事

jutaku02
世帯収入が多いほど無理なくマイホームを購入しているという調査結果をどう見るか

 世帯収入が多いほど、無理のない範囲の金額でマイホームを購入している。そんなアン …

doragi02
欧州の長期金利上昇が日本にも波及。日銀に残された時間は少ない

 欧州の長期金利が上昇している。ECB(欧州中央銀行)が量的緩和策の縮小を検討し …

josen
福島の除染作業で不正が発覚。だが本当の問題は別に存在している

 東京電力福島第1原発事故に伴う、被災地域の除染事業において不正が行われているこ …

tosho05
公的年金はアクティブ運用へ。だが肝心の運用手法については疑問の声も

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、本格的な運用の …

economistataranai
10~12月期GDP速報値。プラス2.2%と事前予想を下回るが、市場は織り込み済み

 内閣府は2015年2月16日、10~12月期のGDP(国内総生産)速報値を発表 …

kabuka
5兆円の損失を公表したGPIFがスマートベータ型運用にシフト。果たして儲かるのか?

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が保有する銘柄の公 …

ishiba
安倍首相は政権運営に自信満々?ガス抜きとしての党内人事や内閣改造も不必要

 自民党は9月17日、役員会を開催し、今月末に任期が切れる石破幹事長ら党三役を続 …

chinajojohaisi
中国で中央政府直系の国有企業初が初の上場廃止

 中国の上海証券取引所に上場していた中国の国有企業「中国長江航運集団南京油運」が …

orandotero
パリ同時テロ容疑者、5000発の銃弾を撃ち込んで急襲も、主犯格は拘束できず

 フランスの検察当局は2015年11月18日、同時テロ事件に関与したとみられる武 …

g8
G8でグローバル企業の租税回避対策が骨抜きになってしまう理由

 シリア問題と並んで主要国首脳会議(G8サミット)の議題の一つであった租税回避問 …