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安倍政権が解雇規制緩和を断念。これでアベノミクスは名実ともにケインズ政策となった

 

 安倍政権は、成長戦略の目玉と位置付けていた雇用規制緩和の導入を事実上断念した。これまでアベノミクスの方向性については、公共事業や特定産業支援(ターゲティング・ポリシー)を中心とした財政出動型と、規制緩和を軸にした構造改革型が混在した状態になっていた。
 だが規制緩和に関するプランは徐々に縮小されていき、最後に残った雇用規制の緩和についても導入を見送った。細かい規制緩和策はまだ残っているものの、アベノミクスは公共事業を軸としたケインズ政策中心の内容になることがほぼ確定的となった。

 政府は10月17日、国家戦略特区における解雇規制の緩和を見送る方針を固めた。
 当初政府では、戦略特区において解雇要件を事前に明確化すれば解雇を自由とする新しい措置の導入を検討していた。
 だが全国一律の雇用ルールを求める厚生労働省が慎重な姿勢を示したことや、解雇が容易になるとして労働組合が強く反対したことなどから、結局、導入を断念した。

 表面的には厚生労働省や労働組合の意向を反映させた形となっているが、実際には産業界からの反対も大きかったと考えられる。
 戦略特区で解雇自由の対象となる予定だったのは、設立5年以内のベンチャー企業や外資系企業であった。これらの企業が解雇自由となり競争力を付けることになると、解雇なしを前提とする既存の大企業が不利になってしまう。政権内部にはこれを支持する人がほとんどいない状態であり、導入断念はある意味で予想された結果であるともいえる。

 安倍政権の経済・産業政策をめぐっては、その方向性の曖昧さがかねてから指摘されていた。経済・産業政策には大きく分けて2つの考え方がある。
 ひとつは財政出動型、もうひとつは構造改革型である。日本は戦後、一貫して財政出動型の経済政策・産業政策を実施してきた。国債を発行し公共工事を実施することで需要を発生させるとともに、特定産業を財政的に支援するターゲティング・ポリシーを積極的に採用してきた。
 だがバブル崩壊以後、財政出動型の弊害が強く認識されるようになり、小泉政権ではこれまでと打って変わって構造改革を軸とする市場メカニズム重視型に舵を切った。だがこの政策の実施には痛みを伴うことから大きな反発を受け、構造改革的な政策は途中で頓挫していた。

 安倍政権では、大規模な公共事業を復活させるとともに、ターゲティング・ポリシー型の産業政策を数多く打ち出してきた。一方で、安倍首相は構造改革を積極的に実施するとも明言しており、その目玉政策とされていたのが解雇規制の緩和であった。市場関係者の一部からは、相反する政策が混在しており、どちらの方向を向いているのか分からないという声も上がっていた。
 今回、解雇規制の緩和を断念したことで、アベノミクスの方向性は、財政出動とターゲティング・ポリシーであることがはっきりした。もし法人税の実効税率軽減が実施されないことが正式決定すれば、20年の議論を経て、従来型の経済政策に完全に戻ったことになる。少なくとも、アベノミクスがどちらを向いているのか分からないという市場関係者の疑問は払拭されることになるだろう。

  ただ財政出動とターゲティング・ポリシーが効果を発揮しなくなったバブル崩壊以後、日本の産業構造は基本的に何も変わっていない。現在は景気循環的な側面で一定の財政出動効果は認められるが、これが永続する保証はまったくない。
 日本は先進国の中で、大規模な財政再建を実施せず、積極的なケインズ政策を採用する唯一の国になった。これが吉と出るのか凶と出るのかは誰にも分からないが、量的緩和策に加えて、もうひとつの壮大な社会実験がスタートしたことだけは間違いない。

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