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円安による輸出回復は困難であることがほぼ確定的に。政府も現状を認識し始めている

 

 アベノミクスのスタート以降、円安によって日本の製造業が回復し、設備投資が復活することが期待されてきた。だがこのところの貿易統計からはその兆候はまったく見られず、製造業の衰退がより鮮明になっている。
 だが日本は保有する膨大な資産を使った投資収益で経常黒字を維持する成熟国型経済に移行しており、製造業の衰退は必ずしも悪いことではない。政府もこの現状を認識し始めており、製造業の復活や設備投資については、あまり言及しなくなってきた。

 財務省は10月21日、9月の貿易統計を発表した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9321億円の赤字となった。赤字となるのは15カ月連続で、過去最高の14カ月連続を上回った。エネルギーの輸入に加え、スマホなどの輸入増加が赤字額を拡大させている。

 日本は製造業の競争力低下とエネルギー輸入の増加、アベノミクスによる円安などによって貿易赤字体質に転落した。
 ただ当初は、円安によっていずれ輸出が盛り返し、円安によるマイナスの影響はなくなると安倍首相は説明していた(Jカーブ効果)。だが通貨安は、輸出よりも輸入に大きく影響するため、Jカーブ効果は得られないとする見解も多く、首相の説明は疑問視されていた。
 アベノミクスのスタート以後、円安が一気に進んだものの、今年6月以降の為替は比較的安定的に推移している。Jカーブ効果に関する検証にはうってつけの状況といえる。Jカーブ効果は本当に存在するのだろうか?

 円安の進展によって日本の輸入額は大きく増加した。輸入が増えても輸出が増えればプラスマイナス・ゼロとなるのだが、思いのほか輸出は増えなかったため、貿易赤字が拡大している。
 輸出額が増えなかった理由は、円安にも関わらず輸出の数量が増えなかったからである。輸出が振るわなかった原因は、日本製品の競争力が低下したことや、工場の海外移転によって輸出そのものが減少したことなどである。製品単価は為替に比例して上昇していることもこれを裏付けている。つまり日本の製造業はすっかり弱くなってしまい、値段が高くてもいいから買いたいという製品ではなくなってしまったのだ。

 最近は為替が安定してきていることから、輸出の金額、数量とも安定的に推移するようになってきた。だが、輸出が横ばいとなる一方、輸入は増加が続いている。このため、Jカーブ効果で想定された状況にはならず、赤字が拡大しているのである。
 これはJカーブ効果そのものが間違っていたということを意味しているわけではない。Jカーブ効果は、基本的な経済環境が変わっていないことを前提にしている。だが日本の製造業は競争力を確実に失っており、円安による輸出メリットを加味しても、輸出を増やせない状況にある。輸出主導型の日本経済の仕組みそのものが変貌しており、Jカーブ効果を得られない体質になっているのだ。

 もっとも、日本経済の体質が変化したこと自体は悪いことではない。日本は過去の黒字を積み上げた膨大な対外資産を保有しており、そこからの投資収益は円安によって増大している。投資収益は貿易赤字の額を上回っており、日本の経常収支はまだ黒字を維持している。
 当初、安倍政権では円安による製造業の復活を大きく掲げていたが、最近はこうした現状を認識し始めたのか、製造業に関するコメントを避けるようになってきている。また内需企業への雇用シフトについて言及することが多くなってきており、これは政権が日本経済の現状を正しく認識し始めたサインと考えてよい。

 内需企業は輸出型製造業に比べ生産性が低く、賃金が安いという問題がある。単純に製造業から内需企業へ人員をシフトすると、国民の所得は一方的に減少してしまう。内需企業の生産性をどのように高めていくのかが今後の課題といえるだろう。

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