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安倍首相が記者出身のスピーチライターを登用する本当の理由

 

 安倍政権は対外的な情報発信能力の強化を目指しており、首相は海外でのスピーチを重視しているという。確かに首相のスピーチ内容は、歴代首相とは大きく異なったものになっているのだが、その理由は、専門のスピーチライターをスタッフとして登用したからである。

 首相のスピーチライターを務めているのは、内閣審議官の谷口智彦氏である。
 谷口氏は日経BP社の記者出身で、第1次安倍内閣では外務副報道官を務めた経験を持つ。英語に堪能といわれており、外交演説をゼロから起草することもあるという。
 「Buy my Abenomics(アベノミクスは「買い」です)」「私を右翼の軍国主義者と呼びたいのならどうぞ」「汚染水は完全にコントロールされている」といった一連の発言は、谷口氏がスピーチライターとしてサポートした成果といわれている。

 一連のストレートな情報発信を評価する声がある一方、力が入り過ぎて配慮を欠いているという指摘もある。例えば、「Buy my Abenomics」は映画「ウォール街」の名セリフをもじったものと考えられるが、この言葉は、嘘と裏切りのマネーゲームに明け暮れる主人公が「俺の本を買えばすべて分かるぜ」と傲慢に言い放つ言葉である。ジョークと言えばジョークだが、ウォール街の欺瞞が米国中で糾弾されている現在の社会情勢を考えると、確かに微妙である。場合によっては株の「買い」を推奨していると解釈される可能性もあり、少なくとも米国の大統領であれば、このようなスピーチは御法度かもしれない。

 一方では、首相のスピーチ内容の妥当性を議論することはあまり意味がないとの意見もある。首相がスピーチライターを登用して情報発信に力を入れる本当の理由は国内向けにあるからだ。つまり「積極的な情報発信をしている」と積極的に情報発信したい相手は、国内世論なのである。そう考えれば、スピーチの内容が多少、相手国にとって微妙なものであっても、国内向けのインパクトが大きければ目的は達成できることになる。

 オバマ大統領は演説の名手といわれている。一方でブッシュ前大統領は木訥としており、魅力的なプレゼンテーターではない。だが米国に対する魅力が両大統領で大きく変化しているわけではない。もちろん演説が魅力的であるに超したことはないが、現実にはその国が何を実行したのかが重要であり、問われているのは政策の実行力である。

 もし安倍政権が本気で外国からの投資を増やしたいと思っているのであれば、外国の企業や投資家にとって魅力的な政策を具体的に打ち出す必要がある。それは法人税の大幅減税であり、大胆な規制緩和なのだが、現在のところその両者とも実現しない可能性が高くなってきている。特に安倍首相は政策の構想段階で外国にアピールしてしまうので、安易な口約束と認識されてしまうリスクが常につきまとっている。やはりスピーチライターの登用は、国内向けと考えるのが妥当なようである。

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