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成長戦略の目玉である産業競争力強化法案は、規制緩和に関する規制を強化する法案?

 

 安倍政権は、秋の臨時国会において成長戦略の目玉とされる「産業競争力強化法案」を提出する。安倍首相は所信表明演説においてこの法案を取り上げ、「新たな規制緩和によりチャンスを広げる」ものであることを強調した。だがこの法案は、規制緩和という政策を軸として、実質的に官庁が持つ規制を維持・強化する内容となっており、ある意味では、戦後最大級の官僚主導型産業政策を目指すものといっても過言ではない。

 この法案のキモとなるのは「企業実証特例制度」と「事業再編の実施に関する指針」の2つである。
 企業実証特例制度とは、企業が新たな分野に進出する場合、企業が政府に対して申請を行い、企業が講じる弊害防止策について政府が問題がないと判断した場合にのみ、特定企業に対して規制を免除するというものである。

  規制のあり方をめぐっては大きく分けて2つの考え方がある。ひとつは、企業活動は原則自由とし、国民生活に問題が発生した場合には処置を講じるというもの。もうひとつは、あらかじめすべてを規制対象とし自由な活動は原則禁止とするものである。自由主義経済においては、当然前者が中心となる。
 日本では実態はともかくとして、建前上は当然、原則自由ということになっていた。だが今回の法案は、規制の存在と適用が前提条件となっており、特例として緩和するという位置付けになっている。同じ規制の緩和、免除といっても従来とは180度スタンスが変わったといってよい。

 また事業再編の実施に関する指針もかなりインパクトのある内容となっている。法案では、政府が「事業再編の実施に関する指針」を定めると記載されている。これはどういうことかというと、どの業種のどの企業の生産性が低いのか、あるいはどの企業が過剰な生産設備を保有しているのか政府が査定し、合理化の進め方について政府が主導するということを意味している。さらに法案には、生産性や財務内容まで政府が目標値を作成するとも書かれおり、企業の適性な利益水準についても国家が決定するということになる。
 法案では、こうした条件に合致した企業再編は特定事業再編計画として認定し、支援するというものだが、これは実質的に政府主導で事業のリストラやM&Aを推し進めることを意味している。

 日本の製造業が過剰な生産設備を抱え、生産性が低下していることは周知の事実である。本来であれば市場メカニズムによって企業が自律的に痛みを伴うリストラを実施するはずだが、現在の日本経済は構造的な問題を抱えており、自律的な改善メカニズムが働かない。また、多くの企業がリスクを取ることを躊躇しており、新しい産業分野への進出も遅れている。

 国家主導型での業際再編の実施や特定企業への規制免除は、短期的にはそれなりの成果を上げることになるかもしれない。だが、自律的にリストラやリスクテイクができなという根本的、構造的な問題は解決されないままだ。国家権力で強制的に業界再編を実施したとしても、いずれ同じような問題に突き当たる可能性は高い。安倍首相がこの法案の内容をどれだけ把握しているのかは不明だが、この法案をもってして、規制緩和を推進するというのはかなり無理がある。

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