ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

経済産業省がこのタイミングで国家統制色の強い法案を出してくる背景とは?

 

 政府が秋の臨時国会に提出する産業競争力強化法案は、政府主導でリストラやM&Aを推進したり、特定企業に対して規制を免除するという、国家統制色が極めて強い内容となっている。この法案を作成したのは経済産業省だが、同省がこのタイミングで国家統制色の強い法案を前面に押し出してきた背景には、経産官僚の日本の産業界に対する強い苛立ちがある。

 産業競争力強化法案には、政府主導による事業再編の実施が盛り込まれている。
 法案では、政府が企業の事業再編や不採算事業からの撤退などを促進すると明記する一方、事業者に対しても、経営改革や生産性の向上を義務づける内容となっている。業界ごとに目標とする生産性水準などを政府が目標設定し、それに合致する事業再編計画に対しては政府が支援を行うとしている。
 だが支援内容は登録免許税の減免など軽微なものであり、こうした優遇措置がこの法案の趣旨ではない。本当の目的は、政府が目標を設定し、事業者に合理化を実施するようプレッシャーをかけることにある。

 経済産業省(旧通商産業省)は戦後一貫して、政府主導の産業政策を提唱してきたが、その結果はあまり芳しいものではなかった。通産省主導の国家プロジェクトは多くが失敗に終わっている。だが1990年代に入り、同省は市場メカニズムを軸に企業の競争を促進する、抽象度の高い政策に方針を転換、ベンチャー投資に関する法体系を整備するなど一定の成果を上げた。また企業に対しては、市場原理を軸にした事業再編や新規事業への参入を促すようになった。

 マクロ経済的に見ても日本の産業界の設備過剰は明らかであり、企業は事業再編やリストラでこの状態を解消する必要に迫られている(同法案にも供給過剰状態を解消することが必要とストレートに明記されている)。しかし長年、官庁主導の護送船団方式に慣れきった日本の産業界は、こうした自主的な経営改革を頑なに拒んできた。
 経産省は電機業界などに対して何度か大規模なリストラやM&Aを実行するよう非公式に打診してきたが、企業側の抵抗によってほとんど実現していない。
 経産官僚には、このままでは日本の製造業の競争力は低下するばかりという苛立ちが募っていた。安倍政権になり、首相秘書官が経済産業省であるという好条件も重なり、同省主導の法案提出が実現したというわけである。

 日本の産業界がだらしないという経産官僚の苛立ちは正論ではあるのだが、仮にそれが本当だとすると、そのようなアニマルスピリットを失った産業界を作ってきたのは、ほかならぬ護送船団方式を主導してきた経産省自身である。政府主導の業界再編は経産官僚の八つ当たりにも見えなくない。一方、公務員の処遇ばかりが優遇される中、民間だけがリストラという痛みを背負うのはゴメンだという民間側の意識も理解できる。このような状態こそが、まさに日本の構造的問題といってよいだろう。

 いずれにせよ、日本の産業界が自律的に供給過剰状態を解消する意思と能力に乏しいのは明らかであり、そうなってしまう何らかの原因が存在している。この根本原因を取り除かないことには、いくら政府主導で業界再編を実現したところで、本当の意味での競争力回復は実現しないだろう。

 - 政治, 経済 ,

  関連記事

jaxass520
民生品を使って低コスト化を狙ったJAXAの小型ロケット打ち上げ失敗。データ送信途絶える

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2017年1月15日、超小型衛星を運ぶ小型ロ …

3dprintergun
米国の学生グループが、3Dプリンタを使って自宅で製造できる銃を公開

 テキサス大学ロースクール(法科大学院)の学生を中心とした3Dプリンターによる銃 …

rakutenamazonyusi
楽天、アマゾンの出店者向けローンが、地銀再編の起爆剤に?

 楽天やアマゾンなどネット通販各社が、自社サイト出店者向け事業者ローンの拡大を進 …

bouekitoukei201305
5月の貿易統計。円安で金額はカバーしたが輸出数量の下落に歯止めがかからない

 財務省は6月19日、5月の貿易統計を発表した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易 …

sitsugyou02
米国の雇用は急回復。焦点は長期失業者対策にシフトしつつある

 米労働省は12月6日、11月の雇用統計を発表した。代表的な項目である非農業部門 …

putin201603
ロシアが北方領土で韓国企業と共同事業。ロシア側に領土問題解決の意思はあるのか?

 北方領土の色丹島で、ロシア企業が外国企業と共同で建設事業をスタートさせたことが …

malala
早くも政治家宣言を行ったマララさんは、パキスタンにおけるスーチー氏

 女性が教育を受ける権利を訴えたことでイスラム武装勢力に銃撃され、奇跡的に生還し …

portgal
プライドが許さない?旧植民地からの逆投資に反発するポルトガルは愚の骨頂?

 経済金融危機に陥っているスペインとポルトガルが、旧植民地との新しい経済関係の構 …

rikagakuken
新型万能細胞に関する画期的研究から考える、日本の官製イノベーション思想の是非

 理化学研究所の研究チームが、酸性の刺激を与えるだけの簡単な方法で、あらゆる細胞 …

yamamotoitiro
著名ブロガーが海外ヘッジファンド積立サービスの会社に公開質問状

 著名ブロガーの山本一郎氏は3月7日、海外ヘッジファンドに対する積立サービス「い …