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ようやく発表になった米雇用統計。雇用なき景気回復の傾向がますます鮮明に

 

 米国の政府機関閉鎖の影響で公表が遅れていた9月の雇用統計が10月22日発表された。失業率は7.2%に低下したものの、雇用者数の伸びは予想を下回った。米国経済は順調に拡大しているが、雇用には思った程波及していない。米国は1990年代に体験したような、雇用なき景気回復(ジョブレスリカバリー)になっている可能性がある。

 米労働省の発表によると9月の非農業部門雇用者数は前月比で14万8000人の増加となった米国では毎月20万人弱のペースで雇用者数が増加していることが景気拡大にとって望ましいとされている。その理由は、米国の生産年齢人口は年間240万人程度増加しているからである。

 米国は移民を受け入れていることもあり、生産年齢人口は一貫して増加している。この1年で生産年齢人口は240万人増加したが、一方で雇用者の数は130万人程度しか増えておらず、生産年齢人口の伸びに見合っていない。
 生産年齢人口の増加を考えれば、新規の雇用者数はもっと伸びてもよいはずである。失業率の数値には、職探しを諦めた人はカウントされないので、失業率が低下しているといっても、実際の雇用環境はそれほど良くない可能性がある。

 FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が前回のFOMC(連邦公開市場委員会)で量的緩和策の縮小を見送ったのは、見かけ上、失業率が低下していても、労働市場の実態はもっと悪いと判断したからである。FRBの次期議長にはイエレン氏が指名されたが、イエレン氏はバーナンキ議長以上に、労働市場を重視するといわれている。このため市場では、量的緩和の縮小が大幅にずれ込むとの見方が広がっている。

 一方、米国経済そのものは順調である。足元では、これまで米国の景気を牽引してきたサービス業が踊り場に入る兆候も見えているが、総じて景況感はよい。米国経済が順調である反面、雇用の状況があまり改善していない現状は、米国経済の構造が以前にも増して変化している可能性を示唆している。

 米国は1990年代、従来型製造業の衰退とIT化の進展で雇用なき景気回復(ジョブレスリカバリー)とよばれる時代を経験した。当時のIT化は主に従来型製造業への影響が大きかったが、ITがさらに社会インフラとして定着するにつれて、サービス業における単純労働や低付加価値オフィスワークにもその影響が波及してきた可能性が高い。

 米国では、経理業務などの事務職もIT化や海外アウトソーシングの対象とされ、大量のホワイトカラーが職を失っている。また単純なシステム構築を国内の企業が請け負うケースは少なく、スキルに乏しい米国のSE(システムエンジニア)の中には、職がないためインドなど途上国に移住する人もいる。
 また無数のネット・サービスが登場し、サービス業においても効率化が進んでいる。このため、景気は拡大しているものの、従来型のスキルしか持っていない労働者は就労機会を得られないケースが増えてきているのだ。仕事をなくす労働者がいる一方、高いスキルを持った高学歴不法移民の合法化を求める産業界からの声は大きいなど、労働市場にギャップが見られる。

 米国は以前から、コモディティ化した業務や製品は低付加価値国にアウトソースし、自国はひたすら高い生産性を求める道を選択してきた。これは今に始まったことではなく、今後もその傾向が続く可能性が高い。そうだとすると、リベラル派といわれるイエレン氏が望むような労働市場の改善は、半永久的に実現しないかもしれない。

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