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米国の諜報機関は本当に全部の電話やメールの盗聴を実施できているのか?

 

 米国の諜報機関による盗聴問題が拡大する兆しを見せている。ドイツのマスコミが、米NSA(国家安全保障局)によるメルケル首相の電話盗聴について報じたことから、オバマ大統領はドイツへの釈明に追われている。ドイツでは今回の件に加えて、NSAが毎月約5億件の電話やメールを盗聴していた事実が明らかになっているほか、フランスでも毎月数千万件の盗聴が実施されていると報じられている。

 米国が、かなりの広範囲にわたって各地の電話やメールを盗聴しているのは間違いないようである。だが、具体的にどのような分析手法を用いているのか、また何億件という監視対象についてどれほど深くまで情報を掴んでいるのかについては、何も明らかになっていない。

 諜報活動の世界では、どの程度の情報収集能力があるのかは最大の秘匿事項であり、逆にウソの情報を流して情報当局の能力を過大評価させるといったことも行われている。このためスノーデン氏によって暴露された情報自体も疑ってかかる必要がある。

 ただ常識的に考えて、NSAの要員(職員3万人に外部委託企業を含めて数万人の陣容があるといわれている)だけで盗聴、分析できる範囲には限界がある。いつ発信されるか分からない世界中の電話やメールを24時間追跡し、その内容を1件ずつチェックするのは事実上不可能と考えられる。専門家の多くはメタデータを使ったマクロ的な分析と特定個人をターゲットにしたミクロ的な手法を組み合わせていると推定している。

 マクロ的な分析は、電話やメールの内容の分析は手間がかかるため実施せず、発信、着信の関係性にのみ着目する手法である。こうしたメタデータを使った分析手法を駆使すれば、あまりリソースをかけなくても驚くほど詳細な分析が可能といわれている。

 メタデータの分析はまずいくつかのターゲットになる人物を選択することから始める。テロリストに関係があると思わる人物をピックアップし、その人物とメールや電話をやりとりした人物の関係性を追跡していく。そうするとメールや電話が集中する人物が必ず現れてくる。この人物はリーダーであったり、キーマンとなっている可能性が高い。
 一方、そのキーマンと頻繁に連絡を取っているにもかかわらず、そのコミュニティの誰とも連絡を取っていない人が見つかることも多い。その人は、愛人だったり、スパイだったり、特殊な関係性になっていることが多い。このようにして、人間関係の全体図を描き出した上で、特定個人の追跡を集中的に実施するわけである。特定のターゲットに対象を絞ってしまえば、その人の電話を盗聴し、内容を分析することは十分に可能となる。

 相手国の政治家といった最初からキーマンであることが分かっている人については、盗聴の手段さえ確保できれば、実行は比較的たやすい。ITを使った監視システムの恐ろしいところは、メタデータの分析手法を使って、容易にキーマンを絞り込むことが可能になった点である。これが可能になってしまうと、メタデータとはいえ、監視対象は全国民にまで広がってしまうからだ。

 NSAによる盗聴問題は国際問題に発展しつつあるが、これ以上の大きな動きにはならない可能性が高い。米国の諜報活動能力は突出しているとはいえ、ドイツやフランスも日常的に盗聴その他の行為を行っているからである。国際政治とは所詮そのようなものである。

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