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まるで日本の電子政府!オバマケアの中核となるWebサイトでトラブル連発

 

 米国の医療保険制度改革(いわゆるオバマケア)の中核となるWebサイトが不具合を起こしていることから、米国で大きな問題となっている。議会ではサイト構築を請け負った企業の責任者を呼んで公聴会が開かれたが、問題が解決するメドは立っていない。

 米国では、高齢者と低所得者層向けにはそれぞれ「メディケア」「メディケイド」と呼ばれる公的保険が整備されているが、日本のような皆保険制度(全員が医療保険に加入する制度)は存在していない。
 米国では高額の民間医療保険に入るのを躊躇する人も多く、約5000万人(6人に1人)が保険未加入と言われている。オバマケアはこうした人の多くを保険に加入させるための制度改革である。

 ただ米国は日本のように全国民向けの公的保険を運営するつもりはなく、オバマケアの内容も、あくまで保険を提供するのは民間であり、政府は国民に加入を義務づけるとともに、経済的に苦しい人には補助を与えるというものになっている。これまで保険に加入していなかった人は、自分はどの保険に入れるのか、またどのような補助を受けられるのかについて連邦政府が運営するWebサイトでチェックすることになるが、今回トラブルを起こしたのはこのWebサイトである。

 オバマケアが始まった10月1日以降、サイトはつながりにくい状態が続いており、保険申請の多くが処理されていない状態と考えられる。法的には来年3月までの加入が義務づけられているが、一部からはこの時期を延期すべきだとの声も出ている。だが政府は今のところ3月で締め切りという方針に変更はないとしている。

 システム構築を米政府から請け負ったのは、カナダのCGI社など数社。システムがうまく稼働していない理由はまだはっきりしていないが、あらゆる保険の種類や国民の条件をシステムに盛り込む必要があり、機能が複雑になってしまったこと、テスト期間が不十分であったことなどが主な原因とみられる。このシステムにはすでに3億7500万ドル(約365億円)が投じられているといわれており、システム修復となるとさらに費用が増える可能性もある。

 米国政府のシステムは、日本の電子政府における見本とされるなど、総じて質が高いことで知られている。だがそれでも、民間のシステムと比較すると生産性が低く、平均して2倍以上のコストがかかっているともいわれている。オバマケアは対象となる国民や保険商品の数が極めて多く、難しいシステムであったという面は否めないが、それでもコスト管理が甘いお役所仕事ならではの失敗といえるだろう。

 ちなみに日本政府のシステム開発の状況はもっとひどい。知財戦略の要として鳴り物入りで構築した特許システムはまったく動かすことができず、開発費をすべてドブに捨てた(本誌記事「特許庁がシステム開発に失敗。高額で民間から雇ったCIO補佐官は何をやっているの?」参照)。また年金などを一括管理する社会保険オンラインシステムは、稼働開始から累計で1兆円以上という想像を絶する費用が投じられたにもかかわらず、特定業者との随意契約が続き、仕様や契約内容に不透明な点があるとして国会で問題視されたことがある。このほか、利用者の利便性を考えないまま構築し、ほとんど利用されていないシステムが多数存在している。

 米議会の公聴会でも指摘されていたが、民間企業がシステムを動かせなければ即、死活問題となる。だが、税金を使ったプロジェクトは当事者の懐が痛まないので、杜撰なものになってしまうことが多い。官という存在はいったい何のためにあるのか、あらためて考えさせられる一件である。

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