Amazon、Google、スタバが各国政府と税を巡るバトル。3社が連戦戦勝のワケとは?
グローバルに展開する米国企業と各国政府のバトルが激しさを増している。
フランスでは、Googleは新聞社のコンテンツをタダ乗りしているとして、検索結果の表示に課税する法律が検討されている。だがGoogleは、複数の閣僚に書簡を送り、課税法案が実施された場合にはフランス語のコンテンツを検索結果から除外するとして、全面対決の姿勢を明らかにした。
フランスでは同社からの書簡が「脅迫」であるとの声が上がっており、フィリペティ文化大臣も課税法案を支持するコメントを出した。
だがフィリペティ文化大臣は古典の教員出身で、緑の党から政治活動をスタートしたゴリゴリの左翼。実際にGoogleの検索からフランス語が除外されてしまう影響は致命的であり、政治的なポーズにすぎないとの見方が大半だ。
また日本と同様、完全な保護産業であるフランスの大手マスコミがこの立法措置を推進しており、しょせんは利権の保護にすぎないという現実も、説得力のなさを助長している。
一方英国では、スターバックスが法人税をごくわずかしか支払っていないことが明らかとなり、政治問題化している。
批判の声はあちこちから上がっているが、肝心の税務当局は、同社の正式な課税額やどのように節税しているのかというスキームには一切触れずじまい。おそらく合法的なスキームで、税の抜け道が存在しており、税務当局は税法上の不備を指摘されることを恐れていると思われる。結局、スターバックスの勝利となった。
課税問題は日本でも起こっている。Amazonが日本で消費税を支払っていないという話が広がり、一時社会問題化しかかった。
だが英国同様、日本の税務当局は、同社が消費税を支払っているのか、払っているとするといくら払っているのかを明らかにせず、結局この問題もうやむやになったままだ。
一連の出来事に共通しているのは、米国企業の徹底した姿勢と、各国当局の後ろめたさである。いろいろと声高に愛国的なことを叫んでいても、結局は米国企業のいいなりになってしまっている。
米国のグローバル企業の納税姿勢をを一方的に擁護するつもりはないが、国内で不公平な税制や法律の不備という弱点があると、海外企業に対して強硬姿勢に出ることができなくなってしまう。当該問題をきっかけに国内における税制のいい加減さが露呈してしまうからだ。
例えば日本でAmazonの課税回避が政治問題になったとする。だが日本には政治力を使って税金回避している団体がたくさん存在する。これらの団体についてはどうなんだ?という話になってしまうと、収拾がつかなくなってしまう。これを当局は恐れているのだ。
このような各国当局の税に関する「後ろめたさ」が解消されない限り、正面から戦いを挑んでくる米国グローバル企業に軍配が上がり続けることだろう。
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