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経済同友会が独立取締役の義務化を要望。実現がほぼ絶望的な理由とは?

 

 経済同友会は10月28日、企業からの独立性が高い「独立取締役」の設置を上場企業に義務づけるよう求める意見書を取りまとめた。ただ秋の臨時国会に審議される会社法の改正案では、独立取締役の義務化は見送られているほか、経済界のほとんどが独立取締役の設置には消極的であることから、実現する可能性は低い。

  会社法の改正案では、独立取締役の法的な強制は見送られており、上場企業については取引所が独自のルールを策定することになった。基本的には独立取締役を選任するか、そうでない場合には、独立取締役が必要でない理由を説明することが求められる。
 独立取締役を不要とする明確な基準はないことから、ほとんどの企業が何らかの理由をつけて独立取締役を選任しないと考えられる。経済同友会ではこの点を憂慮しており、上場ルールを通じた複数独立取締役の選任を強制するための措置を求めている。

 株式会社を公正に運営するためには、経営者に対する外部からのチェックが不可欠である。米国など株式会社の運営に対して厳格な国では、経営陣は常に株主から経営の監督を受けるとともに、経営陣とは独立した取締役を選任し、日常的にも外部チェックを受けるための体制作りが求められている。
 しかし日本では株式会社の制度は完全に形骸化しており、株式会社であるにもかかわらず、株主が経営に関与することができない状態となっている。安倍首相は、海外の投資家に日本企業に対して投資をするよう繰り返し呼びかけを行っているが、外国人投資家の多くはまだ懐疑的だ。その最大の理由は、この企業統治の不透明さにある。

 経済同友会は、経団連などと異なり経営者が個人の資格で参加する団体であり、外資系企業のトップも多い。このため、せめて独立取締役の導入を義務づけることで経営のチェックを強化するよう求めているわけだが、経済界全体の反応は極めて鈍い。当然といえば当然だが、日本の経営者は、株主からのチェックも受けず、独立取締役からのチェックも受けないため、ある意味、やりたい放題の状態である。この特権をやすやすと手放すはずはない。

 企業の業績が低迷し、従業員が給料の減額に苦しむ中、ここ数年で上場企業の経営者の役員報酬だけは大幅に上昇した。資本金10億円以上の会社における役員報酬の平均値は2008年には1650万円だったが、2012年には1710万円になった。一方従業員の平均年収は570万円から560万円に下落している。特に社長の給料はうなぎ登りで、1億円以上をもらっている上場企業の社長は300人近くにも達する。好業績なら何の問題もないだろうが、業績が下がっているにも関わらず高額報酬を支払っている会社や、ひどい場合には、社長以外に社長の役員報酬を知らないという信じられないようなケースすらある。こうなってくるとほとんど無法地帯である。

 日本では規制緩和が叫ばれた2000年代前半、株主の意向を経営に反映させるための企業統治改革を進める動きがあったが、株式会社は株主のモノではないという感情的な議論から改革は立ち消えになった。従業員が上司である経営者を監督できるはずなどなく、結局残ったのは、誰からもチェックを受けない経営者だけであった。
 安倍首相がいくら日本への投資を情緒的に訴えても「あまり儲かってはいないが金は出せ!だが口出しはするな」という姿勢の企業ばかりでは、そこに貴重なお金を投じる投資家などそうそういないだろう。

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