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ニートだけの会社が11月設立へ。批判の声は多いが、ガバナンス論に一石の可能性も

 

 メンバー全員がニートで、株主かつ取締役というまったく新しいコンセプトの会社が11月に設立される。会社名は「NEET株式会社」で、10月30日に東京都内において会社発足のための発起人による押印式が行われた。
 「日本全国のニートが集まり、既成概念や常識に束縛されない自由で新しい会社を作ると」宣言しているが、早速ネットなどでは「お遊びに過ぎない」「ニートがただ集まっても無意味」など批判の声も出ている。この会社がうまくいくのかは未知数ではあるものの、全員が株主でかつ取締役というコンセプトは、会社は誰のものかという議論に一石を投じる可能性があり、一部からは大きな注目を集めている。

 株式会社は数ある会社形態のひとつだが、現在もっとも普及している形態といってよい。

 株式会社の特徴は、会社の所有者を株主と規定し、会社の最終的な経済的責任は株主が負うとした点である。
 一方経営は所有とは分離され、株主から委託された経営者が行う。経営者は経済的な責任は負わなくてよいが、会社が行った行為に対しては法的な責任を負う。
 従業員はいずれの責任も負う必要はない代わりに、経営や所有に関与する権限がない。

 株式会社が普及した最大の理由は、所有権と経営権の分離にある。合名会社や合資会社などでは(戦前の財閥は皆そうであったが)、特定の人物が経済的、法的、道義的責任をすべて負わなければならず、よほどの人材でなければ会社の社主はつとまらない。だが所有と経営を分けてしまえば、お金はあるがマネジメント能力がない人は所有(投資)だけ、マネジメント能力はあるがお金がない人は経営にだけ専念すればよく、会社運営のハードルが下がる。株式会社はそのようにして普及してきた。

 だが最近では、日常的に会社の業務に触れている経営者や従業員が、その有利な立場を利用して所有者である株主の意向を無視するようになってきている。これを是正しようというのが、コーポレートガバナンス見直しの動きであったが、日本では「会社は株主のモノではない」という感情的な意見が根強く、この動きは事実上頓挫した。
 だが、日本企業に粉飾決算などの不祥事が絶えなかったり、必要なリストラが決断できない、あるいは正社員だけが既得権益になっているといった事例が多いのは、経営者が正社員と結託し、外部からのガバナンスが効かない状況を作り出していることと大きく関係している(本誌記事「経済同友会が独立取締役の義務化を要望。実現がほぼ絶望的な理由とは?」参照)。

 NEET株式会社は、経営と所有が分離しておらず、株式会社の形態ではあるが、実質的には株式会社ではない。つまり出資範囲に限定されているとはいえ、ほぼすべての責任を全員で負うというスタイルであり、まさに会社は従業員のモノという理想を実現した会社といえる(本来であればパートナーシップ制など、もっと適合性の高い形態を選択することも可能であったと思われるが、あえて分かりやすい株式会社を選択したのだと思われる)。

 普通に考えれば参加者全員の直接民主制ともいうべきガバナンス体制で、意思決定がうまくいく可能性は限りなく低い。その意味で「どうせ失敗する」という世間の批判はある意味で「まっとう」なものかもしれない。だが、従業員という絶対安全圏にいながら所有権や経営権を主張するという根源的矛盾をクリアしているという点では、非常に論理的である。
 少なくともこうした試みは、日本では制度疲労を起こしつつある株式会社制度や、そこでの働き方に関して、議論の材料を提供するひとつのきっかけにはなるだろう。

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