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携帯電話登場から約30年。ドコモとソフトバンクの立場は180度変わってしまった

 

 NTTドコモとソフトバンクの戦略の違いが鮮明になってきている。2013年9月の中間決算でソフトバンクはNTTドコモを追い越したが、両社の違いは表面的な決算の数字にとどまるものではなく、もっと本質的な部分に起因している。
 徹底的な技術志向で根っからの通信会社であったNTTドコモがサービスの世界に向かい、パソコンソフトの卸会社からスタートしたソフトバンクが逆に、通信会社としての道を邁進しているのだ。

 ソフトバンクは2013年7月、米携帯電話3位のスプリント・ネクステルを216億ドル(約2兆1280億円)で買収した。
 スプリントは全米3位とはいえ、1位のAT&Tと2位のベライゾンには大きく水をあけられている。だが世界最大の通信市場である北米への足がかりができたことは間違いなく、ソフトバンクは完全なグローバル通信企業に変貌した。

 ソフトバンクの2013年4月~9月期決算(中間決算)は、売上高2兆5986億円、純利益は3949億円となった。NTTドコモは売上高2兆1980億円、純利益は3004億円なので、ソフトバンクが売上げ、利益ともにNTTドコモを上回った。米携帯電話大手スプリントの買収効果が数字に反映されはじめた結果である。このほか、イー・アクセス、ウィルコムなどの子会社化も売上増に貢献している。

 一方NTTドコモは海外市場を攻めあぐねている。というよりもむしろ国内の異業種分野への進出が目立つ。NTTドコモと株式会社ABC ホールディングスは10月25日、ドコモがABCの株式の51%を取得すると発表した。ABCホールディングスは傘下の事業会社を通じて、料理教室「ABCクッキングスタジオ」を展開している。ABCの料理教室のコンテンツとドコモのモバイル技術を融合させた新たなサービスを開発するという。
 またNTTドコモは、野菜などの宅配サービスを行っている「らでぃっしゅぼーや」や、CD販売大手の「タワーレコード」を相次いで買収した。また、ショップジャパンの名称でテレビ通販事業を手がける「オークローンマーケティング」も2009年に子会社化している。ドコモは海外に新しい市場を求めるのではなく、国内の既存市場をリプレースする戦略を描いているように見える。

 こうなってくると同じ携帯電話事業者といってもソフトバンクとNTTドコモはまったく異なった企業という位置付けになる。日本の携帯電話事業の創始者であり、技術を誇りにしてきたNTTドコモが異業種参入に積極的になり、もともとはソフトの卸と出版を手がける会社であったソフトバンクが、ひたすら通信会社として拡大を目指しているというのは何とも皮肉な結果である。

 会社単体で見れば、両社の戦略の違いということになるが、マクロ経済的に見ると少し様子は変わってくる。ソフトバンクは海外企業の積極的な買収によって、日本に多額の投資収益(所得収支)をもたらしてくれる。だがNTTドコモの戦略は、基本的に国内市場の奪い合いであり、日本の国際収支には貢献しない。
 NTTドコモには、1兆円以上を海外のM&Aに投じたあげく、その多くが失敗に終わったという過去がある。海外の超大型買収に積極的になれないのは、そのトラウマが原因なのかもしれないが、本来であれば、そうした思い切った買収を行うべきなのは、貿易収支が赤字に転落した「今」というタイミングだったのかもしれない。

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