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もの作り革命の本「Makers」が早くも話題に。だがそれは日本の3回目の敗北を意味する

 

 『ロングテール』や『FREE』といったネットにおける新しいビジネスモデルをいち早く提唱してきたクリス・アンダーソンの新著『Makers』が発売前から早くも話題となっている。

 今回のテーマは「ものづくり」。だが、従来型の製造業の話ではない。
 3Dプリンタが劇的に安価となったことで、自宅で少量生産の製造業が可能となり、ものづくりが根本的に変わるという話である。
 家庭での製造業とまではいなかくても、シリコンバレーでは、ITを駆使した小規模な製造業がここ1~2年の間に相次いで設立されており、米国では製造業がちょっとしたブームとなっているのだ。

 だが本書が日本で話題となっている状況を見るに、日本は第1、第2の敗戦に続いて第3の敗戦を迎えそうな雰囲気が濃厚である。

 第1の敗戦はもちろん太平洋戦争の敗北である。第2の敗戦はネット革命で日本が主導権をまったく握れず、経済政策にも失敗し20年間以上も不況から脱出できないでいることである。
 今回Makerが主張するように、ものづくりのやり方が根本的に変わるのだとすると、ここでも日本は致命的な敗北になる可能性が高い。

 というのも、第2の敗北においても、日本は決して技術で劣っていたわけではなかったからだ。むしろ、米国よりもIT技術は進んでいる部分が多かった。すべてをダメにしたのは、日本の閉鎖的な社会風土である。
 日本の大企業は、同じ技術が日本にもあるにもかかわらず、国内のITベンチャーには見向きもせず、米国で話題となったベンチャーにばかり媚びるように群がった。終身雇用で競争がない日本企業では、国内の新しい技術の採用にリスクを取ってチャレンジする人は誰もいないのだ。
  優秀な技術を持ちながら、日本社会で見向きもされず倒産していったITベンチャーは星の数ほど存在する。

 文化的な面も同様である。日本のジャーナリストで、ネット革命の本質的な意味をいち早く提唱した人は何人もいた。だが権威に媚びることがだけが仕事の大手マスメディアで取り上げられるのは、○×大学教授や元役人など、頭の回転が1世代古い人ばかり。新しいトレンドを生み出すことなどできるわけがない。

 Makerで紹介されている3Dプリンタは、日本が技術的にリードしてきた分野である。だがこれを採用する人も、紹介する人も、事業化する人も、すべてアメリカ人。この本が日本でもブームとなったら、日本の大企業は、また米国企業詣でを繰り返し、マスコミはアメリカ人ばかり賞賛するだろう。

 シリコンバレーのベンチャー投資ファンドは、クルマで30分以内の距離にいないベンチャー企業には投資しないという。どんなにグローバル化やIT化が進んでも、身近な人の中でアイデアを出し合い、新しいことにチャレンジする精神を共有することが何よりも大切であることに変わりはない。

 この本の登場を心待ちにしているようでは、日本の製造業の未来はない。日本の大企業において身近な人が開発した新しいアイデアを取り上げ、「とりあえずやってみるか!」と新プロジェクトを立ち上げる人が何人いるだろうか?結果は明らかである。

 - マスコミ, 経済, IT・科学

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