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経常黒字のカギは海外投資の拡大。だが日本はこれ以上、投資収益を拡大できない?

 

 財務省は11月11日、9月の国際収支を発表した。最終的な国の利益を示す経常収支は5873億円の黒字となった。8月の経常収支は1615億円と低迷していたが、投資収益(所得収支)が増加したことから7月の水準に戻った。ただ季節調整済みの数字では経常赤字となっており、状況はよくない。貿易赤字が恒常化している今、投資収益の拡大が経常収支を安定させる上で重要なカギとなっている。

 貿易収支は9763億円の赤字となった。エネルギーや電子機器の輸入増加で貿易収支は恒常的な赤字体質が続いている。自動車など一部の製造業は輸出の増加が見られるが、赤字の拡大には追い付かない状況だ。
 海外への投資から得られる利益である所得収支は1兆6279億円の黒字となった。まだ米国債への投資が中心だが、直接投資の割合が上昇してきており、それを受けて所得収支の金額は増加傾向にある。2012年12月に経常収支が赤字に転じたが、その後はプラスに転じ、経常黒字は8カ月連続である。

 日本は輸出主導型経済からの転換が進んでおり、貿易赤字を投資収益でカバーする体質になってきている。経常収支が赤字になることは必ずしも悪いことではないが、高齢化が進み、貯蓄率の低下が予想される状況においては、とりあえず経常黒字を維持することは日本経済の安定推移にとってメリットになるはずだ。
 貿易赤字の解消をほとんど見込めない現状を考えれば、経常黒字を維持するカギは投資収益率の拡大ということになる。これまで日本の対外資産のほとんどは安全な米国債で運用されてきた。米国債の運用は安全でリスクが少ないが、そこから得られる収益には限界がある。投資収益を増加させるためには、直接投資を増加させたり、証券投資の内容を変えていく必要がある。

 直接投資を増やすには海外M&Aを増加させ、証券投資の変更はポートフォリオの見直しを行えばよいということになる。だが実際にそれを実行するのは難しく、ソフトバンクやリクシルのような会社はむしろ例外といってよい。その理由は、日本よりも高い投資収益率を得ている国に共通する条件が、日本には欠けているからである。 それは海外からの投資受け入れである。

 海外への投資と、海外からの投資受け入れは、一件無関係に見えるがそうではない。海外からの資本を積極的に受け入れ、企業の国際M&Aが活発に行われる市場環境がないと、海外の会社を積極的に買う企業はなかなか現れてこないのである。これは証券投資も同じだ。資本市場が開放されていて、海外からたくさん資金が流れ込む国は、逆に海外への投資も活発になる。海外からお金は受け入れないが、持っているお金だけは海外で上手に運用するというのは現実にはかなり難しいのだ。

 日本には、海外の投資家が国内企業を買収することを極端に嫌う風潮がある。また国内には多くの規制があり、海外企業の進出を阻んでいる。保護主義的な政策を取るかどうかはその国の自由なので、それは国民が決めればよいことである。ただ保護主義的な政策を維持している間は、海外で高い収益を上げることは難しいと考えるべきだろう。
 そうなってくると、米国債を中心とした現在の海外投資のスタイルは大きく変更することはできず、これ以上投資収益を拡大することは困難ということになる。

 ただ、この状態を放置すればいずれ経常収支も赤字となり、望むと望まざるとに関わらず海外からの資本流入に依存する結果となる可能性が高い。投資収益を拡大する努力を行い、国際収支の変化を穏やかなものにするのか、経常赤字への転換をきっかけに、急激に海外資本に依存するようになるのか、現在の小康状態が続いているうちに、日本は態度を決めておく必要がある。だが残念ながらアベノミクスにはこうした視点は見当たらない。

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