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株式投資を促す私的年金制度を検討へ。だが現在の日本で「貯蓄から投資」はムリ

 

 1600兆円にのぼる個人金融資産の活用について議論する、財務省・金融庁の金融・資本市場活性化有識者会合が11月11日スタートした。私的年金制度の創設などを通じて、預貯金に大きく偏っている金融資産を株式などのリスク資産に振り分ける。
 政府は「貯蓄から投資へ」というスローガンの下、過去10年以上にわたって貯蓄から株式へのシフトについて議論してきたが、まったく成果は上がっていない。市場関係者の多くは、今回の施策も失敗に終わる可能性が高いと見ている。

  日本は、米国などに比べて個人の金融資産における預貯金の割合が高く、これが資金の円滑な循環を妨げているといわれる。確かに日本の個人金融資産の54%は現預金で、株式(投資信託含む)は12%程度しかない。一方、米国は43%が株式で現預金は13%しかない。

 米国では多くの国民が何らかの形で株式投資を行っているため、株価が上昇するとすぐに消費が増えGDPが成長するという効果(資産効果)が得られる。また日本と異なり住宅の質が高く、資産価値が劣化しないので、容易に資産形成が可能となっている。米国のミドル層の生活が、日本人のミドル層よりも圧倒的に豊かなのは、これらが大きく影響している。

 「貯蓄から投資」へという政策はこれにならって日本の家計も株に投資させようというものである。しかし10年間の成果はほぼゼロであり、日本人はまったく株式に投資しようとしなかった。
 政府が打ち出す方策は、今回も含めてほぼすべてが、新制度の創設や優遇税制など、資金の出し手に理由があることを大前提としている。だが、日本において貯蓄から投資への流れがうまくいかないのは、資金の出し手が株式投資に対して極度に消極的だからではない。単純に株式投資に魅力がないので、投資しないだけというのが真実の姿である。政府はこの重大な点を見落としている。というよりも、分かっていてあえてそれを放置しているといった方が正確かもしれない。

 例えばバブル期に株価が急上昇した時には、金融資産における株式の割合は23%を超えていた。また2003年から2007年にかけての小泉政権下で株価が上昇した際には15%近い水準まで株式投資の割合は増えている。日本でも株価が上昇するという期待があれば、株式投資の割合は黙っていても増えてくるのだ。米国はリーマンショックを挟んでも、ここ20年で株価は一貫して上昇を続けており、すでに4倍の水準になっている。投資すれば儲かるのだから、多くの人が投資するのは当たり前といえる。

 バブル期と小泉改革期に共通して言えるのは、規制緩和に対する期待が大きく、多くの海外投資家が日本市場に参加したという点である。成熟期に入った国家において株価を上げるためには、規制のない自由な市場環境が必要なのである。だが、それは現在日本が行っている国家主導的な経済政策とは完全に矛盾する。国民はそのことをよく分かっているので、儲からない可能性の高い株式には投資しないのだ。

 このところ安倍政権は経済政策をめぐってちぐはぐな対応が目立っている。大胆な規制緩和や海外投資の受け入れなど、新自由主義的なスローガンを掲げる一方、足元では規制を強化し、特定産業に対する財政支援策を相次いで導入している。だが新自由主義的な政策はあくまでスローガンであり、現実には、日本経済は国家主導的な色彩をより強めている。このような政策の下では株価の継続的な上昇はあまり望めない。

 私的年金という形で個人の資金を直接リスク資産に振り向けるという今回の方策は、以前に導入した日本版401Kなどと同様、ほとんど機能しない可能性が高い。さらに言えば、多くの規制に守られた日本の公務員や規制産業関係者にとって、株式市場が活発になることなど、むしろ望んでいないだろう。

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