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タイの上院がタクシン元首相の恩赦を否決。帰国は困難になり官僚勢力が増大へ

 

 2006年のクーデターで失脚し、現在亡命中であるタイのタクシン元首相を帰国させるための恩赦法案が11月11日、議会上院で否決された。タクシン氏の妹であるインラック首相は法案成立を断念する意向で、タクシン氏の帰国は難しい状況となった。

 タイでは、タクシン派と反タクシン派(官僚派)の間で激しい政治的対立が続いてきた。
 タクシン氏は実業家出身でタイ有数の富豪。首相に就任した2001年以降、官僚など既得権益層が持つ利権を破壊する構造改革を進め、地方へのバラマキ予算を実施、低所当者層や華僑財界人を中心に絶大な支持を得ていた。一方、官僚を中心とする反タクシン派は、タクシン氏の政策に激しく反発していた。
 タクシン氏は、自身が所有する企業の売却に際して不当な節税工作をしたとして反タクシン派から激しい非難を浴び、2006年には野党による事実上のクーデーターで失脚した。タクシン氏には汚職の罪で実刑判決が下されており、海外で亡命生活を送っている。

 タクシン氏の妹であるインラック首相率いる与党タイ貢献党は、タクシン氏が帰国できるよう、2004年以降の政治危機に関連した政治犯を恩赦する法案を下院で強行採決した。だが反タクシン派はこれに激しく反発し、首都のバンコク市内では大規模なデモが発生していた。結局、上院は全議員の反対で法案を否決し、インラック首相は法案成立を断念する意向を明らかにした。上院で否決された法案は下院に返付されるため、下院で再可決すれば施行させることも可能だが、首相は国内世論を優先したものと思われる。

 今回、法案を断念することになった背景には、タクシン氏の帰国について思いのほか国民からの反発が強かったという現実がある。当初インラック政権は、反タクシン派のみの反対を想定してたフシがあるが、フタをあけてみれば、一般国民の中にも恩赦法案に反発する人が多かった。確かにタクシン氏は絶大な人気を誇っていたが、政治家の人気には賞味期限がある。もしかするとタクシン氏もそろそろ過去の人になりつつあるのかもしれない。

 タイの政治は、官僚を中心とする既得権益層(反タクシン派)と企業家を中心とするアンチ既得権益派(タクシン派)の争いということで、日本の政治ともよく比較される。タイの田中角栄ともいわれたタクシン氏だが、恩赦法案の否決によって帰国のメドが立たなくなってしまった。当分の間、反タクシン派に有利な政治情勢が続くことになる。
 インラック首相は、兄の帰国のメドがつかない中で、今後どれだけ政治力を維持できるのか、その手腕が問われることになる。

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