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憲法改正や集団的自衛権など安倍カラーがなぜか次々後退。求められる明確な方向性

 

 政府が集団的自衛権の行使に関する憲法解釈の見直しを先送りするとの報道が大きな波紋を呼んでいる。安倍政権は当初、憲法改正も含めた保守的な政策を全面に掲げてきたが、次々とこれらを後退させてきた。安倍政権はこの件に関して正式な表明は行っていないが、もし先送りが事実だとすると、現実的なニーズが高いと思われていた集団的自衛権の容認すら後退させた原因について、様々な憶測を呼ぶことになるだろう。

 安倍首相は、憲法改正に対する強い意欲を持っており、政権の最終目標はそこにあると考えられてきた。
 集団的自衛権の行使容認は憲法改正の前段階として位置付けられるものであり、今国会での議論が予定されていた。また政府における憲法解釈の実務を担う内閣法制局長官に、集団的自衛権行使容認に前向きな人物を据えるなど、実務的な準備も進めていたところである。

 だがここ2~3カ月でその動きが大きく変わってきた。憲法改正に関する政権からの発言がほとんどなくなり、当初8月15日に実施するとみられていた靖国神社への参拝も見送られた。ここにきて、憲法解釈の見直しも先送りということになると、安倍政権の当初のスタンスとは180度方向転換したような状況になってしまう。安倍カラーが出ているのは、特定秘密保護法案を残すのみという状況である。

 憲法解釈見直しの先送りを決断した理由として、各種報道では見直しに慎重な公明党に配慮したとの見方や、内閣法制局との調整がついていないといった見方などが紹介されている。だがこれらは原因の一部にはなるかもしれないが、根本的なものとするには弱い。こうしたことから、いつものことではあるが、米国からの圧力があったのではないかとの憶測も一部から出てきている。

 米国は、日中関係がこれ以上悪化することを望んでおらず、中国を刺激する靖国神社の参拝や憲法改正について自重するよう暗に要請があった可能性は否定できない。米国の政界における影響力はかなり低下しているものの、アーミテージ元国務副長官が自民党幹部に対して、靖国神社への参拝を自重し、歴史認識問題に関して従軍慰安婦問題に触れないよう促したとの報道もある。
 また米国から導入に対する強い要請があった特定秘密保護法案だけは、まったく躊躇することなく実施に向けて準備が進められている状況を考えると、米国の意向が大きく影響しているという説には一定の説得力がある。

 だが一方で、実務的な問題を考えると、米国は日本の憲法改正についてあまり積極的ではないかもしれないが、集団的自衛権行使へのニーズは高いと考えられる。実際、安全保障の現場では日米が一体となったオペレーションが強化されており、新型輸送機オスプレイを護衛艦「ひゅうが」の艦上に離着艦させる訓練なども行われている。もともと集団的自衛権の行使を強く求めてきたのは米国であり、今さら米国がこれに待ったをかけるとは少々考えにくい。

 もし米国からの要請が本当だとすると、その理由として考えられるのは、やはり中国からの圧力ということになるだろう。米国と中国は、アジア太平洋地域における両国の軍事バランスをどのようにするのかについて長期的な交渉を開始している。米国のアジア太平洋地域のプライオリティは残念ながら日本ではなく中国にあり、交渉の中で、中国側との交渉材料として、日本の役割を低下させる動きが出てきても不思議ではない。

 憲法改正は多分にイデオロギー論争的な側面があるが、集団的自衛権の行使はかなり現実的な政策課題である。この部分までもイデオロギー論争にしてしまったり、米国による圧力論にしてしまうのは、明らかに日本の国益を損ねる。
 集団的自衛権の行使について、どのように考えているのか、また行使容認後の日本の基本的な安全保障政策をどうするつもりなのか、安倍政権は明確な方向性を打ち出す必要があるだろう。

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