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止まらない医療費の膨張が財政を圧迫。これは日本の中間層が抱える問題そのもの

 

 厚生労働省は11月14日、2011年度の国民医療費の概況を発表した。国民医療費の総額は38兆6000億円となり、前年度に比べ3.1%の増加となった。社会保障費の今後の見通しにおける医療費の伸びは年金などをはるかに上回っており、医療費増大が社会保障政策の大きな障害になりつつある。

  日本の一般的な医療費は、従来型の医療保険制度によって支払われるものと、後期高齢者医療制度によって支払われるものに大別される。後期高齢者医療制度は65歳以上の高齢者に適用されるもので2008年からスタートしたものだが、給付額における割合はすでに32%に達している。日本は高齢化がさらに進むので、後期高齢者医療費はさらに増加してくることが予想されており、これが医療費を膨張させる最大の要因となっている。
 医療費は社会保障費の約3分の1を占めているが、2020年には現在より30%支出が増加する見込みである。赤字が続いているという問題はあるものの、年金が8.7%の伸びに収まっていることを考えると、医療費の伸びが財政に与える影響は大きい。

 財源別に見てみると、公的な負担が39%、企業負担が20%、従業員負担が29%、患者の自己負担が12%となっている。医療は「保険」の制度を採用しているのだが、すでに保険としては機能しておらず、税金でカバーする体質になっていると考えてよい。つまり今後大幅な伸びが予想される医療費は、その多くが国費になってしまうのである。

 ムダな医療費を削減すれば支出を抑制できるという考えもあるが、実際にはそれほど簡単なことではない。65歳以上の医療費における、がん、心臓疾患、脳血管疾患の占める割合は40%に達しており、命に関わる病気で支出の半分近くを占めている。またジェネリック医薬品など薬価を抑制しようという動きもあるが、薬に関する支出は医療費の17%であり、大きな削減は期待できない。

 医療費の増大は、国民負担の増大、国の財政問題という二つの観点で議論する必要がある。国の一般会計における社会保障費は2012年度予算で29兆円と全歳出の3分の1を占めている。国債費や地方交付税交付金などを除いた一般歳出との比較では50%以上が社会保障費である。この数字は毎年2兆円から3兆円ずつ増加しており、確実に日本の財政を圧迫する。
 国債のこれ以上の増発はほぼ不可能なので、増大する医療費をカバーするためには、国民負担を増やすか、逆に医療費を大幅に削減するしかない。社会保障費は金額があまりにも大きく、富裕層の負担を重くすればよいとか、貧困層への給付を減らせばよいというような次元を遙かに超えている。何かと話題の生活保護による医療給付は全体の5%程度に過ぎないのが現実であり、これはボリュームゾーンである中間層に対する給付と負担をどうするのかという問題そのものといってよい。

 日本は国民全員が等しく医療を受けられる皆保険制度を基本に、世界一の長寿を実現した。だが今後もこうした充実した医療制度を維持する代わりにさらに高い負担を受け入れるのか、あるいは医療の水準を低下させてでも、医療費を抑制するのか、日本の中間層の意思が問われている。

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