ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

世界の航空機市場は急拡大。日本の閉鎖市場は製造業にも影響を与える可能性がある

 

 欧州の航空機大手エアバスは、中東の航空会社3社から合計で137機、推定400億ユーロ(約5兆4000億円)の航空機を受注したと発表した。またライバルであるボーイング社も、新型機777Xについて合計259機、総額で950億ドル(約9兆5000億円)以上の受注を獲得したと発表した。

 このところボーイングとエアバスの両社はかつてない規模の大型受注に沸き立っている。背景にあるのは、世界の航空機市場の急拡大である。
 航空機市場の拡大は、ボーイングに部品を納入している日本メーカーにとっては喜ばしい話といえる。だが視点を変えてみると、日本経済は世界の航空機市場から完全に取り残されつつあるという現実も見えてくる。

 最近の航空機市場の急拡大を支えているのは、アジアを中心とする新興国市場の急拡大と、全世界的なLCC(格安航空会社)の発展である。
 エアバス社の今年に入ってからの航空機納入件数は半数近くがアジア圏内で、北米と欧州を上回る勢いである。また航空会社もかつてのようにナショナル・フラッグではなく、LCC向けが急増している。エアバス社における今年の欧州向け新規受注の大半はイージージェットやジェットブルーといったLCCであった。

 世界の航空輸送はここ10年で劇的な増加を見せている。旅客数は北米で約1.3倍、欧州とアジアは2倍に拡大した。米国はもともと圧倒的な飛行機大国だが、欧州は統一市場の影響が大きく作用しており、アジアと同水準という驚くべき拡大ペースとなっている。だが日本は同期間で10%強しか伸びておらず、世界の市場拡大に完全に取り残されている。

 その最大の理由は日本の航空行政にある。日本は、空港などの施設が官庁の巨大利権となっており、利用料が極めて高い。航空会社はどんなにコスト削減を行っても顧客に安い料金を提示できない構造になっており、日本の航空運賃は国際的に見て異常に高い水準で高止まりしている。一方で空港の発着枠や航空会社の新規参入には極めて高いカベが儲けられており、日本の航空会社は国際競争を回避できるようになっている。

 日本にはグローバルな競争主義を受け入れる必要はないとの意見も根強い。もちろんそれはそれでひとつの見識であり、最終的には国民が判断すべきことである。だが、こうしたグローバルな競争を拒否する一方で、製造業については輸出を拡大すべきだという見解が圧倒的に多い。これは完全に矛盾した考えである。
 日本の自動車メーカーが世界トップに立つことができたのは、日本が自動車における世界有数の市場だったからであり、日本の半導体がかつて世界を席巻できたのは、日本人自身が半導体のヘビー・ユーザーだったからである。最大の半導体ユーザーであるパソコン分野で米国に負けた日本は、結局半導体そのものでも米国に敗れる結果となった。国内の市場が成長しない分野では、いくら技術力があっても、最終的にその分野での地位は失われていく運命にある。

 日本メーカーはボーイングに対して多くの部品を納入しており、世界的な航空機市場拡大の恩恵を受けている。だがエアバスは日本メーカーからの部品納入が少ないという現実を考えれば、航空機の主要部品を製造できる国は日本だけではないことが分かる。
 エアバスに部品を納入するメーカーが、現在の市場拡大を背景に生産力を大幅に増強し、従来の枠組みを超えてボーイングに対しても攻勢をかけてきた場合、日本メーカーの地位が安泰とは限らない。

 日本がものづくり大国として今後も成長したいと考えるのであれば、国内市場を閉じていては逆効果になる。最近の経済政策は、国内産業の保護を強化する一方、輸出は拡大させるという傾向がより強まっている。こうしたちぐはぐな政策では、肝心の輸出拡大にもつながらないということを日本人はそろそろ理解すべきである。

 - 経済 , , ,

  関連記事

usakoyoutoukei201403
良好な雇用統計にも関わらず、米国株が大幅下落。潮目は変わったのか?

 米労働省は2014年4月4日、3月の雇用統計を発表した。非農業部門の新規雇用者 …

bouekikontena
デフレでゲタを履かせられた7~9月期の実質GDP。輸出の落ち込みはかなり深刻

 内閣府は2016年11月14日、2016年7~9月期のGDP(国内総生産)速報 …

amari
本来の趣旨とは正反対。法人税減税議論は活力を削ぐ後ろ向きな話題ばかり

 法人税の実効税率引き下げの財源として、企業の赤字繰り越しを縮小する案が浮上して …

euwhitehouse
TPPも骨抜き?米欧FTAの交渉がいよいよスタート。米欧は妥結にかなり前向き

 米国と欧州の自由貿易協定である米欧FTAに関する第一回の交渉が7月8日、米国ワ …

kozeni
消費税の軽減税率導入が決定。どの商品を対象とするのかは巨大な政治利権に

 自民・公明の両党は11日、消費税増税に伴う低所得者への対策として、生活必需品の …

frb
FRBが利上げを見送り。今後の焦点は労働市場ではなくインフレ率

 FRB(連邦準備制度理事会)は2015年9月17日に開催したFOMC(連邦公開 …

orando
仏オランド政権が政策を180度転換。企業優遇と福祉削減にとうとう舵を切った!

 富裕層や大企業に対する増税など、反企業的な公約を掲げて大統領に就任したフランス …

kuukikan
中国の富豪が大気汚染に抗議?して空気の缶詰を販売。シニカルな戦略が意味するもの

 連日、深刻な大気汚染が続いている北京でユニークな商品が販売され話題となっている …

ecb
EUが銀行監督一元化で合意。欧州は後戻りできない道に入った!

 欧州連合(EU)は13日に開いた財理事会で、ユーロ圏の銀行監督業務をECB(欧 …

shogaigenneki
厚労省が年金の維持可能性検証をスタート。全国民・生涯現役が必須要件か?

 厚生労働省は、長期間にわたって年金を維持することが可能なのかについての検証作業 …